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「“ホットプレートで簡単！ 餃子の皮ピザ”？」
レシピの端には、「友達や家族とワイワイ！」と書かれた吹き出しが出ている。
「これがやりたかったの？」
「うん。Aが喜んでくれるかなって」
人間の気持ちがすべて理解できているわけではないと言っていたのに、健気な心がけに胸を打たれていると、剣城が私の手からレシピを取った。
「それ、作るの難しい？」と天馬がたずねる。
「難しくはないが、ホットプレートなんて――」
「あるよ」
剣城が驚いて私を見た。その脇を通り過ぎ、私はキッチンの棚の奥にしまい込んであった箱を取り出す。
「お母さんが時短になるからってよく使ってた。ちょっと古いけど……」
箱の中身は一人から二人用のホットプレートだ。しばらく使っていなかったが、作る上では問題なく使うことができるだろう。
「やろうよ、剣城」
「……」
彼は悩んでいるようだった。私と天馬の顔を交互に見て、何かを諦めたようにため息をつく。
「……わかった」
「やった！」
私は天馬に手のひらを差し出した。天馬はそれを不思議そうに見つめている。
「何？」
「手のひらと手のひらを合わせるんだよ。ハイタッチって言うの」
「こう？」
天馬は私の手のひらに、自身の手のひらを少し勢いをつけて合わせた。パン、と音が鳴る。
「これがハイタッチ。嬉しいときにするんだよ」
「ハイタッチ……ねえ、剣城もやろうよ」
「俺はしない」
「一回だけ！」
ほら、と手のひらを差し出す天馬に、ハイタッチをしないと彼が意地でも引き下がらないと踏んだのか、剣城は仕方なくといった様子で天馬の手のひらを打った。
小さなホットプレートを囲みながら、トマトやアスパラ、しらすやツナ、コーンなど、それぞれ好きに具材を乗せた。剣城は最初「俺はいい」と言っていたけれど、天馬に誘われると断れないようで、途中から大人しく参加していた。剣城が食事しているところを見たのは、これが初めてだった。
「ねえ、映画を観てもいい？」
「いいよ。何を観るの？」
「どうしようかな……」
天馬はマイリストを眺めた。
身に覚えのないタイトルが増えている。天馬が追加したものだ。ジャンルはバラバラで、有名どころから聞いたことの無いタイトルが無造作に放り込まれている。
「じゃあ、これにしようよ」
私は、サングラスをかけたシスターがサムネイルになっている映画を指さした。
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作者名：春間 | 作者ホームページ：https://twitter.com/April_hrm
作成日時：2022年9月11日 15時
