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「ごめん、天使の羽は人間には見えないんだ。悪魔の羽もそう。イメージと違うよね」
私の脳は、早々に彼らの言っていることが理解の範疇を越えていると判断した。固まる私をよそに、天馬が話を続ける。
「ここは天国に行く前の、待合室みたいなところだよ」
「だから、まだ天国と決まったわけじゃない」
遮るように、剣城と名乗った黒いローブの彼が言った。
彼らの話を信じるのも馬鹿馬鹿しいように思えるが――ここには私と彼らしかいない。そして、天使と悪魔、天国と地獄、相反する単語から導き出される答えはひとつだ。
「――私は死んだってことですか？」
「そうだよ。死因はトラック事故」
あっけらかんとした返答を聞いた途端、目の前がちかちかするようなフラッシュバックが起き、足元がふらついた。
――酷く雨が降っていて、トラックが近付いていることに気がつかなかったのだ。
自分で言うことではないかもしれないが、死ぬにはまだ若い。こんなに早く寿命が尽きるほど、生き急いだつもりもない。死ぬことが、こんなにも悲しいことだなんて。
落ち込む私を気に留める様子もなく、天馬は続けた。
「まずは本人確認をしなくちゃ」
私が「本人確認って何？」とたずねる前に、天馬が一枚の紙を手にしながら、名前、出身地、生年月日を読み上げていく。それらは間違いなく、私のものだった。
「足のサイズは二十三センチメートル？」
――たった一つを除いて。
「……いや、違います」
首を横に振ると、天馬は勢いよく顔を上げ、信じられないと言いたげに目を見開いた。一方の剣城は眉間に深いしわを刻み、天馬の手から書類を奪い取る。
「……違うのか？」
「は、はい……」
睨み殺されるのでは、と思うような鋭い視線に、私は震え上がった。
「――人違いだ」
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作者名：春間 | 作者ホームページ：https://twitter.com/April_hrm
作成日時：2022年9月11日 15時
