【イナGO】迷える子羊を愛せよ上【天使と悪魔パロ】 (ページ32)

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episode3 悪魔の誘惑

「彩花(あやか)ごめん、お待たせ！」
「A、久しぶり！」

　待ち合わせ場所に着く頃には、約束の時間をわずかに過ぎていた。

　今日は、高校時代の友人である彩花とディナーの約束をしていた。彼女は高校卒業を機に地元を離れていたが、数ヶ月前に転職で地元に戻ってきている。
　久しぶりに会った彩花は髪を染めメイクを覚えずいぶんと垢抜けていたが、私を見つけ綻んだ表情には高校時代の名残があった。

　近況を話しながら店に入り、料理を楽しんだ。二人とも大人になったものの、話し始めれば高校生に戻ったような感覚がした。

「実はね、今気になる人がいるの」

　食後の紅茶を飲んでいると、内緒話をするように彩花が言った。

「え！？どんな人？」
「今の職場の先輩で……光橋(みつはし)さんっていう人でね、かっこいいんだ」
「そうなんだ……！何か話した？」
「それが緊張しちゃってさー。なかなかうまくいかないんだ」

　照れ笑いを浮かべる彩花は楽しそうで、こちらまで口角が上がってしまう。高校生の頃は、誰がかっこいいとか、クラスの誰と誰が付き合ってるとかいう話で盛り上がったものだが、社会人になってからこういう話をするのは久々でついテンションが上がる。

　ひとしきり話したあと、終電が無くなってしまう前に帰ることになった。
　名残惜しいが、以前とは違い仕事終わりに気軽に会える距離にいるのだ。近いうちに会う約束をして、私たちは別れた。