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After story-零れ桜(Ryota.M)2 ページ22

四人を見送った後、宮舘は一人、川を眺める。

この河原には、昼も夜もない。
薄曇りの続く空と、風が吹くこともない空間で
現れては川を渡っていく人と、子供たちの積み上げる石と
それを崩しに時折現れる、鬼と思しき生き物だけが
時間が止まっていないことを、宮舘に教えてくれていた。

この場所には、沢山の人が現れては
宮舘に手を振って河の向こうへと渡っていった。

その中には、宮舘を知る者も勿論居て
河原でぼんやりとしている宮舘を見ると
驚いた顔をして、束の間の再会を楽しんだ。

それから。
どれだけの人を見送っただろう。
Aと別れてから、どれだけの時間が経ったのだろう。
Aは、元気に過ごしているのだろうか。
一人で泣いたりしていないだろうか。
そう考えだすと、心配は止まらない。
Aを知る人に、彼女の様子を聞くこともあったが
やはり自分の目で、確かめたい。

奪衣婆へ、現世の状況を見る方法がないかと尋ねてみたが
一蹴されてしまった。
それでも何度も食い下がったせいか
ここ最近では、本来であれば川を渡れと催促する側の奪衣婆が
宮舘の顔を見ると、そそくさと距離を置く始末だ。

宮舘は、やはりぼんやりと川を眺めていた。

「兄ちゃんは、誰かを待ってるの?」

石を積み上げている子供の一人に問われる。

「うん。奥さんを待ってるんだ。」
「奥さん?お嫁さんってこと?」
「そうだよ。」
「いつ来るの?」
「いつかなあ。まだずーっと先かなあ。」
「ふーん。どんな人?」
「強い人だよ。」
「へえ。お兄ちゃんより強い?」
「もちろん。俺なんか全然敵わないよ。」

そう答えると、宮舘の決して小さくはない、
着物の上からでも分かる鍛えられた体を確認するように見た子供が驚いた顔をした。
それが可笑しくて、宮舘は笑う。

「兄ちゃんのお嫁さん、すごいね。」
「すごいんだよ。しかも、すごく奇麗で、可愛いんだ。」
「会いたい?」
「会いたい。
 …けど、まだ会いたくない、気もするかな。」
「?」

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設定タグ:深澤辰哉 , 阿部亮平 , 宮舘涼太   
作品ジャンル:タレント
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Y.Harumizu(プロフ) - 蓮花さん» 感想ありがとうございます。仇討ちとても良かったですよね。そうですね、どの夫婦も辛くて幸せですが、舘様夫婦は少し色味を変えたお話にしました。いつか国王の短編も書けたらと思っていますので、その時はよろしくお願いします^ ^ (7月24日 22時) (レス) id: 3d23a8217f (このIDを非表示/違反報告)
蓮花(プロフ) - 一番好きな演目が仇討ちでした。そして先でも後でも一緒に逝けるのは幸…せだなと思いました。でも意志を継ぐって、それはないよ!キツすぎる!って号泣しながら読ませていただきました。他作品を見ると舘様の作品がなくて、ちょっと残念です。宮舘担なので… (7月24日 15時) (レス) id: 185c333094 (このIDを非表示/違反報告)
Y.Harumizu(プロフ) - minaさん» 感想ありがとうございます。もう一度演目を見たいと言っていただけて嬉しいです。あの演目も大好きなので、歌舞伎のテーマの愛が、微力でも私も表現出来てたら嬉しいです。 (2023年5月4日 18時) (レス) id: 4a6ffd3422 (このIDを非表示/違反報告)
Y.Harumizu(プロフ) - マコトさん» 感想ありがとうございます。舘様の選んだ人は、きっとこんな強い人だろうなと思って書いたので、そう言っていただけて嬉しいです。そして私も桃色様担当なので、嬉しいです(笑) (2023年5月4日 18時) (レス) id: 4a6ffd3422 (このIDを非表示/違反報告)
mina(プロフ) - 切なくて儚くて涙が止まりませんでした。このお話を読み終えた今、もう一度仇討ちの演目が見たくなりました。心がまとまりませんがどうかそれぞれのご夫婦が来世で幸せになれます様に、と心から願っております。ありがとうございました。 (2023年5月4日 5時) (レス) id: ff96477080 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Y.Harumizu | 作者ホームページ:http://beautifulvitamin.yukihotaru.com/  
作成日時:2023年5月1日 14時

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