Streptocarpus(Shota.W) (ページ6)

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Streptocarpus 6 ページ6

楽しそうに笑ったままのAが、チューハイの缶を傾ける。

「私、渡辺くんが好きだから。
　それ以外の人は好きじゃないの。」

べこり、とビール缶が凹む音がして
一気に顔が熱くなる。
さっきまであったモヤモヤは、いとも容易くどこかに消えた。

「…っ、…よく、そんなこと、言えんな。」
「どっかの誰かさんが、よく分かんないことで
　落ち込んでるから。」
「落ち込んでない。」
「落ち込んでたじゃない。」
「落ち込んでねえ！」
「はいはい。すっかり元気ね。
　あ、新しいの持ってこよ。」
「おいっ。」

そう言って立ち上がったAは、新しい缶を手に戻ってきて、一口飲んだ後に、美味しい、と、小さく漏らす。

それは、Aの『いつもの』ではなく、コレも好きなんじゃないかって、思って俺が選んだやつ。
自分の推測が間違ってなかった、そんな些細な事が、こんなに簡単に気持ちを上げる。

「…うまいかよ。」
「美味しい。」
「感謝しろよ、それ、買ってきたの俺だから。」
「？うん、ありがとう。」
「俺だから、それ買ってきたんだからな。」
「？？？うん？？」

Aを見ている俺だから。
Aを好きな俺だから、聞かなくても
Aの好きな物を買ってこれるんだぞ。

そのこと、ちゃんと、分かってくれよ。
練習中の俺には、まだ、言葉にできないけど。

fin