Streptocarpus(Shota.W) (ページ5)

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Streptocarpus 5 ページ5

『言葉で伝える練習をして。』

付き合い始めた当初に言われた、そんな言葉を不意に思い出した。
俺はその時、それに頷いたから。

「………Aも、逞しい男が好きなの。」

喉に少しつっかえさせながら
やっとそう言葉にする。

「やっぱり電話聞こえてた？」
「…まあ。ごめん、盗み聞きするつもりはなかった。」
「うん、分かってる。」
「ん。…で？」
「で？」
「好きなの？」
「筋肉？」
「筋肉っつーか、逞しい男？」
「まあ。」
「好きなの？」
「これ、そんなに落ち込むような重い話？」

首を傾げるAを睨む。

そりゃ、落ち込むだろ。
そんな具体的な名前出されて
しかもそれは自分とは似ても似つかないような
漢前と認めざるを得ないような奴で。

「渡辺くん、何か色々混乱してるね？」
「あ？」
「柄悪いなあ…。」
「……すまん。」
「うん。逞しい人が好きかというと、好みではある。」
「…ん。」
「岩本くんが好きかというと
　それは友達が名前を出しただけで
　岩本くんが好きってわけじゃない。
　勿論、格好良いとは思うけど。」
「は？なんでだよ。照、逞しいし、いい奴だろ。」

好きじゃないと言われると
それはそれでムッとする。
照だぞ。
あの岩本照だぞ。

くすくすと、Aが笑う声がした。

「なんで、渡辺くんが怒るの。」
「だって岩本照だぞ。好きになるだろ。」
「メンバーのこと、好き過ぎるでしょ。」
「うっせ。で？なんで照がダメなの。どこが？」
「渡辺くんじゃないから。」
「は？」
「岩本くんは格好良いし、逞しいけど
　渡辺くんじゃないから、好きじゃない。」

ぎょっとした。