Streptocarpus(Shota.W) (ページ3)

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Streptocarpus 3 ページ3

「いらっしゃい。」
「うす。」
「もしかして焼き鳥買ってきてくれた？
　キャベツ切る？」
「食う。」
「はい、ちょっと待っててね。
　あ、焼き鳥も温め直す？」
「お願いします。」

焼き鳥と飲み物をAに渡して、洗面所へ向かう。
冷たい流水で手を洗うと、少しだけ胸に溜まったモヤが流れる気がした。

本当に少しだけ。

リビングに戻るとAがキャベツをテーブルに運んでいた。

「…なんか、やる？」
「ううん、座ってて？もう終わるから。
　あ、渡辺くん、何飲む？
　なんか沢山買ってきてくれてたけど。」
「あ、おれはビール。」
「え、そうなの？チューハイ沢山あるけど。」
「それは…まあ。」

そのチューハイの山は、悩んだ結果。
Aが好きなのはコレとコレだけど
コレも好きそうじゃね？とか
期間限定とか試したがりだよな、とか
気付いたら、自分用のビールの3倍は
カゴに入れていて。
いつかは飲み切るだろ、腐るもんじゃねえし、と
言い訳した結果。

「好きなの飲めば？」
「？色々買ってきてくれてありがとう。
　じゃあお言葉に甘えて。
　んー、期間限定にしようかな。」

ほらな、なんて、Aのチョイスに
誰にでもなく胸を張る。
Aのこと、そこそこ分かってんだよ、俺は。

「？まだ立ってたの？欲しいものある？」

そんなことを思っていたら、不思議そうな顔のAに声をかけられて、慌てて椅子に座った。
いつの間にか、テーブルには湯気の立つ焼き鳥も並んでいた。

「買ってきてくれてありがとう。」
「…準備してくれて、あざす。」
「「いただきます。」」

２人で手を合わせて、Aは期間限定の夏らしい派手なパッケージの缶を、自分は見慣れたビールの缶を傾ける。
それから、各々好きな串を取る。

「美味しい。このお店の、やっぱり美味しいね。」
「ん。」

もぐもぐと動くAの頬を眺めながら、相槌を打つ。
Aはチューハイの成分表を眺めている。
文字があると読みたくなるらしい。
自分には一生分からない感覚だ。

リビングが静かになると、不意に、排水溝に流し損ねたモヤモヤが舞い戻ってきた。

「……今日さ。」
「ん？」

思い出したらもうダメなのが俺で、黙っとく事が中々出来ない。
でも、大事な事はちゃんと言えない。
ガキっぽくて、面倒くさくて、直さなきゃいけないと分かっていても、それを受け止めてくれるメンバーとAに甘えてしまっている自覚はあった。