Streptocarpus(Shota.W) (ページ2)

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お気に入りの焼き鳥屋で２人分のテイクアウトを買って、タクシーで向かう。

袋から香る良い匂いに腹を鳴らしながら、少し離れたコンビニで降りて、飲み物を買って通い慣れた道を辿る。

『友達から電話来たから、合鍵で入ってくれる？』

Aの好きな飲み物はどれだっけ、と悩んでいると
届いたメッセージに、了解、とスタンプを返す。
もう少し飲み物に悩んでも良さそうだ。

サンダルをペタペタと鳴らしながらエントランスを潜って、静かに玄関を開けると、奥から聞こえるAの声。

廊下を進むにつれ、クリアになるその声に、ほっとした安堵を覚えるようになったのはいつからだったか。
何となく、気恥ずかしい。

「うんー、合コン、合コンね。
　いや、まあ、彼氏は居ないんだけど。
　今は仕事楽しいから。」

そんな安心感は、軽く吹っ飛ばされたけど。

「うん。うん。分かってるけど、ほら、私
　普段イケメンを見過ぎてるから
　目が肥えてるというか。
　その辺りのイケメンじゃ、もう
　トキメかないっていうか、あはは！
　ごめんごめん、冗談。」

冗談に聞こえねえから、それ止めろ。

「え？岩本照似のイケメン？
　ハードル上げてるけど、大丈夫？
　本人様、予想を遥かに超えて格好良いよ？」

ふーん。
照のこと、格好良いって思ってんだ？
まあ、カッコいいけど。

「えー、うん、まあ、好みだけど。
　確かにあの逞しい腕と胸板は、好みだけど。」

へえ。
逞しい腕とか好みなんだ？
まあ、気持ちは分かるけど。

「んー、まあ、うん、考えとくね。じゃあね。」

そう言って通話は終わったらしく、家の中が静かになって、慌てて廊下を少し戻る。

盗み聞きしてたなんて、カッコ悪い姿は見せたくなくて
戻った廊下を今度は少し足音を大きくして歩くと、リビングからAが顔を覗かせた。