Photo 3 ページ8
随分強くなったな、と輪花を吐夢は見つめる。
こんな輪花も悪くない。
自分に愛されて、愛されることに疑いを持たない輪花も、愛おしい。
愛する人が、自分の愛をきちんと受け取ってくれるという事実は、吐夢を幸福にする。
吐夢は、緩く笑うと瞳を伏せる。
「じゃあ、代わりに一緒に写真撮ってくれますか。
それなら、壁紙変えます。」
「え、それは嫌だけど。それを壁紙にする気でしょ。」
「はい。じゃあ僕も嫌だ。」
輪花は口を尖らせ、暫し吐夢を見ていたが
吐夢が折れないと悟ったのか、溜息を吐いた。
「…ロック画面じゃないなら。」
「？」
切り分けたケーキを口に入れ、もごもごと口を動かす輪花の目は、不自然にケーキからも吐夢からも外されていた。
少しだけ、その耳の縁が赤いことに
吐夢は瞳を細める。
「ホーム画面だけにするなら。
…今度、写真撮っても良い。」
「今日はだめなんですか。」
「お化粧崩れてるし、やだ。」
「…はい。」
「他の人に見せるのもダメだから。」
「誰にも見せません。」
「よく分かんないコラージュ作るのも、もうやめて。」
「輪花さんが一緒に撮ってくれるなら。」
「絶対他の人に見せないでよ。」
「はい。」
「…あと。」
「はい。」
吐夢が輪花のスマホをハッキングしていた限りでは、輪花はこんなに我儘を、自己主張をするタイプの人間には見えなかったし、確かに保守的で、臆病で、相手と空気に流されるタイプの人間だった。
それは間違いない。
彼女自身が言った通り、輪花は変わったのだろう。
吐夢の望む方向へ。
「……撮ったら、私にも写真送って。」
この変化の良し悪しは分からない。
ただ、吐夢の望む方へ変化してきている事に間違いはなかった。
「はい、勿論。じゃあ、今度。絶対に。」
少しずつ少しずつ。
輪花は輪花の意思で堕ちてくる。
ゆっくり、ゆっくり。
抗うことなく、あたたかな底なし沼へ堕ちるように。
fin.
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Y.Harumizu(プロフ) - マコトさん» 私も初日に観てきました✨実はこういう仄暗い狂気系がとても好きで好きで、友達と何とか吐夢くんが幸せである姿を考えたい！って話してたら書いてました（笑）本当、彼の中の沼は深いです… (2月26日 17時) (
レス) id: 245b47ec32 (このIDを非表示/違反報告)
マコト(プロフ) - Harumizuさんがこのネタを書いてくださるとは！！ 初日に観てきました。桃様の表現者としての実力に圧倒されました。……解っていたけど、本当に深いですよね……彼の中の沼って。 (2月26日 16時) (レス) @page3 id: 777d8311f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Y.Harumizu
| 作者ホームページ：http://beautifulvitamin.yukihotaru.com/
作成日時：2024年2月26日 16時
