If 3 ページ3
「特にこだわりないから。
輪花さんが好きなようにします。」
「ねえ。」
「あ、でも。輪花さんがくれたコートが
似合わなくなるのは、ちょっと困りますね。」
「…本当にもう…。」
「あれ、気に入ってるから。」
輪花がまた少しだけ微笑んで
箸を動かす姿を見つめる。
全て本心だ。
輪花が望むなら、こんな外見等幾らでも変える。
けれど。
「…今のままで良いと思う。」
輪花はそんな事を望まない。
「輪花さんがそう言うなら。」
「でも、ちゃんとご飯は食べて。」
「食べてます。」
「コンビニご飯だけじゃなくて。」
「最近のコンビニは、結構健康志向の物も
あるんですけどね。」
「そうだけど。」
「またこうやって一緒に食べてくれますか？」
「！」
「それなら、自炊もするよう努力します。」
輪花と目が合ったかと思うと、すぐに逸らされて
俯いていく輪花の頬が、少し強張って
赤く染まっていく様を見つめる。
一瞬も見逃さないように。
「1人分も2人分も変わらないから。」
「はい。」
「…急に、1人でご飯食べるのも…
まだ、慣れないから。」
「はい。」
「食べたくなったら、連絡してきたら。」
ああ、運命のひと。
天使のように愚かで美しい、愛おしいひと。
「そんなこと言っていいんですか。」
「え？」
「毎日連絡しますよ、そんなこと言ったら。
僕、元ストーカーだし。」
「…何それ、冗談に聞こえない。」
「冗談じゃないですから。
輪花さんのご飯、美味しいし。」
「……毎日は無理。
仕事で忙しい日も、外食する日もあるし。」
「そうですね。」
「…でも、連絡くれたら、検討する。」
「はい。」
「突然勝手に来るのはナシね。怖いから。」
「はい。もうしません。
怖がらせたいわけじゃない。」
輪花の視線が上がり、その口元が綻ぶ。
ゆっくりと細くなるその瞳には、
喜色だけが浮かぶ。
「輪花さん。次、いつ会えますか？」
「もう次の話？そうだな、次の休みは…」
くすくすと輪花が笑う声が、食卓に鳴る。
吐夢は、ゆっくりと微笑んだ。
少女のような、無垢なその笑顔を見つめて。
離さない。
逃がさない。
いつかその聖母のような微笑みが
消えてしまっても、大丈夫。
あなたへの愛は深海よりも深く、
消えることはない。
誰が否定しようとも、誰が阻もうとも。
リビングの隅。
輪花の父の遺影が笑んでいる。
「愛してます。」
その言葉に、輪花の瞳が溶ける。
四葉のクローバーはもう、要らない。
fin.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 69人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Y.Harumizu(プロフ) - マコトさん» 私も初日に観てきました✨実はこういう仄暗い狂気系がとても好きで好きで、友達と何とか吐夢くんが幸せである姿を考えたい！って話してたら書いてました（笑）本当、彼の中の沼は深いです… (2月26日 17時) (
レス) id: 245b47ec32 (このIDを非表示/違反報告)
マコト(プロフ) - Harumizuさんがこのネタを書いてくださるとは！！ 初日に観てきました。桃様の表現者としての実力に圧倒されました。……解っていたけど、本当に深いですよね……彼の中の沼って。 (2月26日 16時) (レス) @page3 id: 777d8311f2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Y.Harumizu
| 作者ホームページ：http://beautifulvitamin.yukihotaru.com/
作成日時：2024年2月26日 16時
