If 2 ページ2
「吐夢？」
「…はい。」
吐夢が顔を上げると、不思議そうな顔をした輪花がこちらを向いていた。
「何か良いことあったの？嬉しそうな顔してる。」
唯島家のテーブルに向かい合わせに座った、輪花と吐夢の前には輪花の作った夕飯が並んでいる。
いかにもといった家庭料理の味の良し悪しは
吐夢には分かりかねたが、輪花が自分のために作ったというだけで、吐夢には何よりも価値のある物だった。
「僕、嬉しそうでしたか。
輪花さんが作ってくれた料理を
輪花さんと一緒に食べてる今以上に
嬉しいことはないですが。」
変な意味で吐夢の奇怪な言葉に慣れつつある輪花は、本来であれば照れて然るべきストレートな吐夢の言葉に照れる様子もない。
「何となくそう思っただけ。」
「そうですか。この煮物、美味しいですね。
ありがとうございます。」
「口に合ったなら良かった。」
「輪花さんの作った物を食べられる日が
来るなんて夢みたいです。」
これは心からの本心だ。
輪花と、
『自分の家族』と食事を共に出来る日が来るなんて。
「大袈裟。でも、私もストーカーと一緒に
ご飯食べる日が来るなんて、考えもしなかった。」
「元、ですから。」
「うん。」
輪花も大概狂っているな、と吐夢は時折思う。
こんなに簡単に自分のような、
狂った人間の言葉を信じてしまうのだから。
それも一種の狂気だ。
まあ、だからこそ、手に入れられたのだろうが。
狂人と常人のマッチング率が97%であるわけもない。
「吐夢は、普段ご飯どうしてるの。」
「…コンビニが多いですかね。
料理とか、出来ないから。」
正確には、料理は出来る。
施設で一人で生きていくための術は一通り習ったが
興味がないから出来ない。
興味のない事に割く時間は、吐夢にはなかった。
「ふうん。だからいつもそんなに顔色悪いんだ。」
「…もしかして、心配してくれてますか、
僕のこと。」
「そんなこと。
…私より色白なのが気に入らないだけ。」
「僕、外に出ないから。
輪花さんが嫌なら焼いてきます。
どのくらいが良いですか？」
「違っ…、本当、そういうところ。」
「嫌ですか？」
「変わらないなって思っただけ。」
輪花の苦笑の中に混じる愛情は、
やはり吐夢を満足させる。
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Y.Harumizu(プロフ) - マコトさん» 私も初日に観てきました✨実はこういう仄暗い狂気系がとても好きで好きで、友達と何とか吐夢くんが幸せである姿を考えたい！って話してたら書いてました（笑）本当、彼の中の沼は深いです… (2月26日 17時) (
レス) id: 245b47ec32 (このIDを非表示/違反報告)
マコト(プロフ) - Harumizuさんがこのネタを書いてくださるとは！！ 初日に観てきました。桃様の表現者としての実力に圧倒されました。……解っていたけど、本当に深いですよね……彼の中の沼って。 (2月26日 16時) (レス) @page3 id: 777d8311f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Y.Harumizu
| 作者ホームページ：http://beautifulvitamin.yukihotaru.com/
作成日時：2024年2月26日 16時
