Merry Xmas2023(Koji.M) (ページ5)

今日:5 hit、昨日:15 hit、合計:7,964 hit

Weihnachtsbaum nur für Dich 5 ページ5

「秘密。」
「ええ？なんでなん？やっぱり意味あるんや？」
「どうでしょう。」
「教えてえや。」
「やーだ。あ、ねえ、康二。ヤドリギは要らないの？」
「ヤドリギ？何それ？あ、丸い輪っかのやつ？」
「それはリース。」
「ほーん？なんで？それも飾り付けに要るん？」

いまいちヤドリギがピンとは来ていないらしい、向井にAは悪戯っ子のように瞳を細めて笑い
向井を手招きして、近づいて来たその耳に手を添えて、内緒話をするように声を潜めた。

「クリスマスの時期はね、ヤドリギの下で
　キスされたら、女の人は拒めないの。」
「！！！！！！！」

ギョッと目を見開いた向井は、顔を真っ赤に
したかと思えば、スマホを手に取るとすぐさま立ち上がった。

「買うてくる。」
「え？」
「クリスマスの時期って、もう今もやんな？
　そんで25日までよな？
　Aさんは飾り付けして待ってて、
　すぐ買うてくる！」
「え、うそ、ちょっ」
「あ、さっくん？なーなー、ヤドリギっちゅーやつ、
　どこで買えるか知らん？普通の花屋で売っとる？」

コートを引っ掴んでパタパタと玄関へ向かいながら、スマホを耳に当てて佐久間に電話をしているらしい向井の背をAはぽかんと見送る。

暫くして聞こえた、玄関が閉まる音に
Aは我に返ると、溜息混じりに立ち上がり
内鍵を閉めて、またソファに座る。
ソファに背を預けて、Aと同様置いてきぼりにされたツリーを見れば、ソファに座ったAのちょうど視線の先。
オレンジのマフラーをした雪だるまが、にっこりと笑っていた。

「ふふ。やっぱりそこが一番よく見える。」

そんなAの呟き等知らない向井が
すぐにはヤドリギが買えなかったらしく、肩を落として帰ってくるのは３０分後のこと。

fin.