Nigella 5 ページ5
そんな事を話していればお湯が沸いて、Aがケトルからゆっくりとお湯を落とすのを、隣で見守る。
コーヒーの良い香りが、一気に広がった。
その香りを楽しむように、一瞬沈黙が下りて、じっとコーヒーを見つめるAを眺めた。
膨らんだ濃い茶色の粉が落ち着くと、また細くAがお湯を注ぐ。
それを何度か繰り返す。
そう、こんなふうに康二もしていた。
こんなに静かではなかったけれど。
「……あんまり見られるとやり辛いんだけど。」
「良いじゃん。Aのやり方見て覚えてんの。」
「向井くんに習って。」
「やだよ、康二のじゃなくて、Aの味がいいの。」
最後の一雫がカップに落ちると、Aはパックを外して、マグカップを深澤に差し出した。
「はい。あっちに運んでくれる？」
「了解。」
それを受け取って、リビングに戻ると
すぐに来たAと先程と同じようにソファに並んで座る。
「それで？」
「それで？」
マグカップに口を寄せたAに問われた事を、オウム返しに返す。
それくらい、その問いは今までの会話と繋がりが見えなくて。
「佐久間くんには、何で張り合ってみる？」
「は？佐久間？何で急に佐久間？」
マグカップを手に持ったまま、意外そうに瞬きをするAの瞳を湯煙越しに見る。
「え、無意識だったの？」
「何が？さっきから話が見えねえんだけど？」
もう１度瞬きをしたAの瞳が、今度はゆるゆると笑みの形に細くなっていくのを、コーヒーを一口飲みながら、見る。
何となく、眉間に皺が寄るのが自分でも分かった。
「てっきり、３人に張り合ってるんだと思ってたんだけど。」
「３人？」
「阿部くんと向井くんと佐久間くん。」
「はあ？」
思わず零しそうになるコーヒーをテーブルに置く。
Aは相変わらず楽しそうに、マグカップに唇を当てていた。
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Y.Harumizu(プロフ) - 櫂さん» ありがとうございます^ ^可愛い系の紫様は初めてだったので、笑っていただけたなら、本当に嬉しいです。 (9月18日 22時) (
レス) id: 3d23a8217f (このIDを非表示/違反報告)
櫂(プロフ) - ここまで自然に声に出してふっと笑えた作品は初めてかもしれません……！素敵なお話をありがとうございました！ (9月18日 0時) (レス) @page6 id: a2cc3a07ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Y.Harumizu
| 作者ホームページ：http://beautifulvitamin.yukihotaru.com/
作成日時：2023年9月13日 17時
