Sweet poison for you(Tatsuya.F) (ページ1)

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Sweet poison for you 1 ページ1

深澤には貢ぎ癖がある、とAが気付いたのは深澤と付き合って、そう経たない頃だった。

「こないだナベと買い物行った時にさあ、
　ナベに勧められて試した化粧水がすっげえ良くてさ。Aの分も買ったから、良かったら使ってみてよ。」

「昨日の収録で紹介されたお取り寄せの肉がめっちゃ美味かったから、お取り寄せしちった。
　一緒食お？」

「昨日ぶらぶらしてたら、Aが好きそうなネックレス見つけちゃったのよ。ね、付けて見せて？」

こんな事は日常茶飯事で。

挙句、深澤が身に付けているアクセサリーを褒めようものなら。

「え、A、こんな感じのアクセも好きなんだ？
　じゃあこれあげる。俺、他にも持ってるし。」

となって、断るのに一苦労して以来、おちおち深澤のファッションを褒めることも出来ない。

深澤が苦労して得た報酬の使い道に口を出したくはないが、軽いノリで貰うには０の数が多すぎる物と頻度に、Aも断らざるを得ない。
それに、例え貰っても、恐れ多くて使えやしない。

深澤の努力の結晶は、深澤のために使って欲しいし
こんな高価な贈り物をAは望んでいない。
きっとこの釣り合わない天秤は、いつか自分達の関係にヒビを入れるだろう。

だからこそ。
そろそろしっかり腰を据えて話し合わなければない、と。
Aは今日の貢物である、お高いトマトを食べながら決意した。

「あ、早速食ってんの？それ、スゲェ甘いでしょ。」
「うん、すごく甘くて美味しい。ありがとう。」

シャワーを終えた深澤が、ガシガシとタオルで髪を拭きながら戻ってきて、ひょいと皿に盛られたトマトを摘む。

「A、こういうの好きよな。」
「そうね。お野菜大事。」

ぷちり、とヘタを外したトマトを、流れるように、自然に深澤がAの口元に運ぶ。

「ん。」
「…ありがとう。」

大人しくそれを食べるAを見る深澤の顔は、嬉色に満ちて、ひどく甘い。

「本当そういうところ…。」
「なに。」
「何でもない。」
「そ？もう一個食べる？」
「自分で食べるから、辰哉は髪乾かしてきて。」
「はあいよ。」

ふらりふらりとリビングを出る深澤の背にAは小さく溜息を吐いて、もう一つトマトを食べた。