Filled with happiness(Tatsuya.F) (ページ5)

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Filled with happiness 5 ページ5

その夜。
深夜にも近い時間。
阿部の顔を照らすのは、ビビットなカラーが映し出されたモニターの光。
装着したヘッドセットからは
ゲーム仲間の、向井、深澤、佐久間の声。

インクで陣地を塗っていくそのゲームで
今日は、向井・佐久間ペアと阿部・深澤ペアで戦っている。
そして。

「え？え？え？え？なんなん、嘘やん、またやられた！」

「は？！またふっかさん！？あか、あーーー！！！
　後ろからって、あー！」

「あかんて、ふっかさん！なんで俺ばっか狙うん！
　これ、敵倒すゲームちゃうで！
　さっきから、全然塗っとらんやん、あー！
　またやられた！！」

向井の悲鳴がゲームのBGMをかき消していた。

そんな悲鳴に深澤が答える声はなく
ただただ、深澤が向井を撃墜し続ける戦況は
既に３戦目にも関わらず、続いている。

「さっきから塗ってんの、俺と阿部ちゃんだけじゃね？」
「あー…ね。」

向井の悲鳴の合間に、佐久間のぼやきが聞こえて
阿部が相槌を打つ。

「ふっか、どーしたの？康二となんかあったの？」
「あー、あったような…なかったような。」

壁を緑色に塗りながら、佐久間の質問に
また曖昧に相槌を返す。
深澤から向井への執念染みた攻撃の理由は
昼間の事に間違いないが
深澤も聞いている中でそれを言うのは躊躇われた。
あと、単純に、くだらな過ぎて口にするのも面倒だった。

「さっくーーん！！阿部ちゃんと話とらんと助けてぇな！」
「あー、えー、俺こっち塗っとくか」
「またやられたー！！！！ふっかさーーーん！！」
「康二うるさーい。」

昼間の嫉妬をゲームで晴らしてる、なんて
あまりにくだらな過ぎるでしょ。

阿部は溜息を吐いて、ひたすら自分のメンカラを塗り広げていった。