EDWGS(Ryohei.A)８１ ページ31
長いような、短いような沈黙の後
阿部の頭は、Aの胸に抱き寄せられていた。
「私も、一緒に居たい。
亮平くんの、傍に居たいよ。」
Aの返事を理解するのに、一瞬の間を要する。
ずっと聞きたかったその答えを
すぐに信じるには、その言葉は甘過ぎて。
Aの指先を解放して、代わりにその背に腕を回す。
少し名残惜しさを感じながら
Aの胸から頭を外して、Aの顔を覗き込んだ。
「…ほんとに？いいの？無理してない？」
「無理はしてるよ、もう、今、
泣くの我慢するの大変。」
「ちが、だって、俺と居ると疲れるって」
「疲れるよ、完璧な彼氏を持つと。
でも、彼氏じゃなくても、疲れるみたい。」
我慢していると言うAの言葉通り
辛うじて涙を零さないAの瞳は濡れていて
その瞳が、悪戯っぽく笑う。
「私が居ても居なくても、亮平くん、
無理するんだもんね？
今回のことで、よく分かった。
だったら、無理してるの、
すぐ察知できる傍にいる方が、まだ、気が楽。」
「…妥協感が、すごいね？」
「妥協じゃないから。選択って言って。」
「うーん、まあ。いいや。今日は、もういい。」
背中に回した腕に力を込めると
少しAとの距離が近付いて
１度その唇に視線を落として
それからまたAの目を見る。
「いい？」
「ダメって言ったら、しないの？」
「ううん。する。紳士ぶってみただけ。」
笑うAの唇に、そっと唇を重ねる。
何ヶ月か振りのキスは、驚くくらい幸せで
頭の中がふわふわとした。
抱き締める腕に力を込めると
背中にAの腕が回される感触がして
その感触に泣きそうになるのを、何とか堪えた。
EDWGS(Ryohei.A)８２→←EDWGS(Ryohei.A)８０
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 346人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Y.Harumizu(プロフ) - 神威さん» 泣いていただけて、少しでも気持ちに響く部分があったなら、嬉しく思います。神威さんの望む結末と私の書く2人が出した答えが重なると嬉しいですが、お陰様で何とか最後まで書き切ることができました。ありがとうございました！ (6月11日 18時) (
レス) id: 3d23a8217f (このIDを非表示/違反報告)
Y.Harumizu(プロフ) - マコトさん» いつもコメントありがとうございます。いやいや、阿部ちゃんには結局頑張ってもらったので（笑）マコトさんの中に残る言葉が１つでもあったなら、嬉しいです。コメントで励まされたおかげで、何とか最後まで書ききれました！ありがとうございました！ (6月11日 18時) (レス) id: 3d23a8217f (このIDを非表示/違反報告)
神威(プロフ) - 初めて泣きました。最初からここまで、ギュッと胸を引き絞られるような痛みがまるで本物で、この感情をお伝えするには、私の拙い語彙では足りません。ひとつだけ願わくば、この作品の結末を見届けられたら幸せです。 (6月6日 3時) (レス) id: aa58e06295 (このIDを非表示/違反報告)
マコト(プロフ) - ……頑張らなくてもいい阿部ちゃんに「頑張れ」とコメントしてしまった浅はかな私(←反省) 私は印象に残った言葉を手帳に書き記す習性があるのですが『可能であることと、容易であることは全く違う。』このお言葉､いただきました。 (6月5日 19時) (レス) @page8 id: f6a74c2234 (このIDを非表示/違反報告)
Y.Harumizu(プロフ) - マコトさん» ありがとうございます😊やっとここまできました（笑） (6月4日 19時) (レス) id: 3d23a8217f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Y.Harumizu
| 作者ホームページ：http://beautifulvitamin.yukihotaru.com/
作成日時：2023年5月4日 18時
