塩15g ページ17
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今私は社長室のドアの前にいる。
昨日ユンギに言われたとおり、どちらも出来るよう願いに来たのだ。
下手すればクビ、リスクは十分すぎるほどあって、それがまた私の決心を揺るがす。
けれど、決めた。
大きく息を吸って、吐いて、気持ちを落ち着かせてコンコン、とノックをした。
開けた先には待っていたと言わんばかりの社長が。
女性の秘書に前と同じような高い紅茶を入れてもらう。
前は入れてもらったにも関わず1口を飲まなかった。
せっかく入れてもらったのだから、そう思い1口飲むとすごく美味しかった。
紅茶を飲んだからか、緊張もいい感じにほぐれた。
もうあとには下がれない、いや、下がるつもりは毛頭無い。
「社長、今日は返事をしに来ました」
「あぁ。返事、聞かせえ貰えるかな」
柔らかく微笑む社長。
もしかしたら今から返事した内容で社長は私に失望するかもしれない。
リスクしかないこの答え、社長は分かってくれるだろうか。
分かってくれないだろう、だけどわかってくれると自己暗示して息を吸った。
「アイドルのメイクアップアーティスト専属には、なれません。」
社長を見ると残念そうな顔をしていた。
「Aさんなら、そう言うと思ったよ」
少し悲しそうにいう社長に心が痛んだ。
私を見込んで今回の件を勧めてくれたんだ。
そう思うと心が痛くてたまらなかった。
「…私は、舞台やファッションショーのメイクアップの仕事もやりたいです。
だからといってアイドルのメイクアップがしたくないというわけではありません。
両方させてもらうことは、出来ないでしょうか」
深々とお辞儀をして誠心誠意を表す。
我儘だってことは分かる。
こんなのダメだってことぐらい。
だけどユンギの言った通り、どちらかを選んだとしても、失礼なだけ。
生半可な気持ちでやるぐらいならやらない方がいいんだ。
「顔を上げなさい」
社長からそう言われて顔を上げると、社長は眉をひそめていた。
「Aさんがそこまで言うなら仕方ない。
両方とも、今まで通りしてもらうね。
だけど、アイドルのメイクアップの仕事も入っているから仕事の量は多少増えるってことは覚悟しといてね」
「…っ、はい」
私の気持ちが、伝わった。
嬉しくて、嬉しくて泣きそうだ。
ユンギがもしも昨日来てくれなければ私はまだ迷っていた。
ユンギが背中を押してくれたからだ。
ありがとう、ユンギ。
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しゃしゃねこ(プロフ) - 未緒さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて幸いです! (2019年4月29日 22時) (レス) id: 0f734cf238 (このIDを非表示/違反報告)
未緒(プロフ) - おもしろかったです。 (2019年1月6日 15時) (レス) id: 36c5d68dfd (このIDを非表示/違反報告)
しゃしゃねこ(プロフ) - KangOneさん» コメントありがとうございます。キュンキュン?!うわあ、最高の褒め言葉ありがとうございます!!このユンギさん、甘々デロデロすぎて元のユンギさんが行方不明になってしまいましたが笑笑 何回も見返してくださってるんですか?!嬉しすぎます!ありがとうございます (2018年9月9日 22時) (レス) id: 0f734cf238 (このIDを非表示/違反報告)
KangOne(プロフ) - 初めまして!この作品すごく好きです、めっちゃキュンキュンしました!!私はユンギペンで、こんなに愛されたいなあと思いました(笑)何回も見返してニヤニヤしてます! (2018年9月9日 0時) (レス) id: 6681273a8f (このIDを非表示/違反報告)
しゃしゃねこ(プロフ) - ぽぬこんさん» コメントありがとうございます。ユンギペンなんですか!! キュンキュンしてくださりありがとうございます笑 (2018年4月29日 21時) (レス) id: 0f734cf238 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃしゃねこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/KanonGintoki/
作成日時:2018年4月7日 6時