クリムゾン・ラヴ (ページ29)

今日:109 hit、昨日:162 hit、合計:74,554 hit

29 ページ29

「ごめん…今日は帰るね。
バッグ持ってきてくれてありがとう。
あと…こんな時間まで一緒にいてくれてありがとう。」

伝票を持って席を立つ。

「んーん！気にしないで。
ひとりで帰れる？送ってくよ？」

「大丈夫。テヒョンも気をつけて帰ってね。
あの、また改めて話したいことがあるから…」

やっぱり、ちゃんと言おう。

テヒョンを見るたびに、ソクジン先生がちらつく。

こんな状態で…これからテヒョンの彼女、続けられない。

「うん？だから俺はなんとも思ってないって！
もう今日のことはお互い忘れよ？
はい、この話は終わりね！」

じゃ、行こっ！

テヒョンはそう言って私の手から伝票を奪うと

そのまま手を引いて会計に向かった。

テヒョン、私の話…聞こうとしてない。

やっぱりテヒョンも

私が何を言おうとしてるかわかってるんだ。

俺を捨てないで、とテヒョンに言われたけど

ここで私が別れを切り出すということは

テヒョンを捨てるってことなのかな。

でも、このままテヒョンと関係を続けたとしても

私、どっちみちテヒョンのこと

傷つけることになると思う。

先生…

先生は4年ぶりに私に会って

なんて思ったのかな。

医者になるって夢、叶えられたんだね。

よかった…。

「A！」

「！！」

その声にハッとする。

目の前にはテヒョンの顔。

いつのまに会計を終えたのか、私はカフェの外に立っていた。

「あ、あれ…お会計…」

「俺の奢りだから気にしないで。
ていうか、Aボーッとしすぎ！」

テヒョンは私のおでこに軽くデコピンする。

「あ、ご、ごめん！何から何まで…」

「大丈夫！じゃ、俺こっちだから。
A、またね。」

ふいにテヒョンが、私の唇にキスしようと

顔を近づけてくる。

「っ！！」

反射的に

後ろに後ずさった。

テヒョンからのキス、

無意識に、避けてしまった。

「ご、ごめんっ…。
私行くね…、また連絡する…っ」

ごめん、ごめんテヒョン。

やっぱり私最低だ。

今のテヒョンの顔。

あんな悲しそうな顔、初めて見た。