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Aから告白されて、付き合うまで時間はかからなかった。
俺はAのことが大好きだったし、
Aも俺のことが大好きだった。
俺達はよく似ていて、
お互いに依存し、なくてはならない存在になっていた。
ずっと一緒にいたくて、俺だけのものにしたくて。
……だけど、それは一年後には手放さないといけないもの。
時が止まってほしい、
そう、いつも思っていた。
Aには、バイトしてるなんて言えなくて、
毎日塾に行ってるなんて嘘をついた。
あの伯母と伯父が俺に塾なんて行かせるわけがない。
そんな嘘を、Aはひとつも疑いもしなかった。
……嘘をついているということに、罪悪感ばかりが募った。
夏くらいになって、バイトが終わったあと、ヒョンに、
「十二月に決定したから」
とそれだけ言われた。
歌手を目指すことにも、やってみたいと思えるようになっていた俺には、
夢を追いかけることと、すぐ近くの幸せを、天秤にかけてもどちらが俺にとっての本当の幸せなのか自分でもわからなかった。
そんなことをずっと考えているうちに、
時はとめどなく流れていった。
ー
秋がやってきたころの朝、
Aが狭いベッドでぎゅうっと抱きついてきた。
足を絡ませてきて、俺の胸に頭をぐりぐりとしてくる。
朝っぱらからそんな可愛いことされると、俺我慢できなくなっちゃうよ?
『……ぐく、』
俺の胸に顔を埋めたまま、俺の名前を呼んだA。
「ん?」
『……変な夢見た』
「へんなゆめ?」
『うん。』
内容を聞いてみると、
冬に一緒に雪を見ている時に、
Aがまだ花が咲いていない桜の木を見て、
『はやく春になって桜が咲かないかな』
って言ったらしい。
すると俺は、「花は残酷だよ、雪を殺しちゃうから。」
なんて言いながら泣いた、という夢。
「なにそれ(笑)」
俺、そんなこと言うかな?
『……そのあとにグク、「どうせ春なんて俺には来ないんだけど」って言ったの。この夢なんかリアルで、すこしこわくなっちゃった。』
……春なんて俺には来ない。
これは、現実だ。
涙が流れる。
花が咲くころ、俺はAのとなりにはいないんだ。
Aの頭を優しく撫でながら、
気付かれないように、静かに涙を流した。
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wannablecarat3(プロフ) - わたしが初めて#wannaoneで妄想を読んで泣いたお話です。もう一度読みたくてツイッターで探していたのですが見つからなくて(ほんとに半年くらい探してました笑)やっと見つけられました( ; ; )このお話とってもダイスキです。また読ませてもらいます!! (2018年11月24日 13時) (レス) id: 39e8549199 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん(プロフ) - すごく泣いてしまいました(TT)まさに求めてたような内容で...(><)!素敵な作品ありがとうございます。続きも読ませてもらいますね (2018年1月8日 23時) (レス) id: f78d992b41 (このIDを非表示/違反報告)
みづき(プロフ) - すごい泣いてしまいました、こういう作品をずっと探してたんです!これからも頑張ってください! (2017年5月6日 23時) (レス) id: 51c1afe3ea (このIDを非表示/違反報告)
mitunaynxx0917(プロフ) - 分かりました!楽しみに待っています! (2017年5月2日 23時) (レス) id: 7338e1e59a (このIDを非表示/違反報告)
月野(プロフ) - mitunaynxx0917さん» 二章はまだ下書き中なので公開していません(T_T)しばらくお待ちください (2017年5月2日 9時) (レス) id: a5e5b03616 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月野 | 作成日時:2016年12月3日 10時