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コッコッコッ、と軽い音が素早く連続して流星街に響く。
月明かりの中を駆ける小柄な人影─子供だろうか それは腕になんとか引っかかっているようなブカブカのコートを着てパンを片手に走っていた。
その四肢は、まるで骨。まるでというか 骨そのものだ。時折覗く左脚の太もも部分は辛うじて肉体のようだが。
「はっ、はっ………
…バーカ」
瓦礫に隠れて後ろを見つつ耳を済ます。かすかに聞こえていた怒声はいよいよ無くなっていて、しばし息を整えると再び駆け出した。
今日のねぐらである壁に傾けられた大きな板に近付けばすすり泣く声、見れば幼い少女がうずくまっていた。
「……人のねぐらで何してるわけ?」
「っひ、だれ……っ?えぐっ」
「何してるかって聞いてんの」
「おに、お兄ちゃんとはぐれ、うあぁぁぁん!!」
「迷子かぁ……」
めんどくさ、と思わず呟く。泣き虫は嫌いだ 騒音以外に何も生み出さない。
「おにい、おにいちゃ……むぐっ!?」
「うるさいからこれでも口入れとけば。僕寝るから静かにしててね」
少女の口にパンを半分突っ込んで自分も半ば飲み込むように食べると寝転んだ。ブカブカのコートに包まって丸まればマシな布団代わりになる。
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作者名:クヴァール&くろのちか x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年1月21日 17時