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「あ……兄様!兄さんが今 卯の戦士と、早く行かなければ!」
「寵蛇、落ち着いて聞け。愚弟はついさっき首を切られた あっけなくな」
「……は」
ついさっき、だって。
自分はついさっきあの場から逃げてきたばかりなのだ。そのほんの数分の間に末兄は殺されてしまったというのか。
泣き叫ばないのは戦士としての鍛錬や経験の賜物だろう、だからと動揺しないわけでも悲しまないわけでもない。
「……わ、私が、私が、逃げたからですか。無理にでも加勢していれば 兄さんは」
「愚弟にしては懸命な判断だし巻き添えくって死ぬよりマシだ。上に行くぞ 掴まってろ」
連絡などせずとも辰は巳の頼み事を分かっていた。ならばそれを遂行すべきだろう、自分たちの大切な妹を守るためだ。
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一方、下水道ではヘリコプターの羽音のようなものが聞こえきていた。
こんな地下にヘリコプターが来るわけもないのだがそれ以外に例えようがない。
「何だろう…?寝住くん起きて」
寝こけていた子を蹴り起こす。和平主義者にしては荒っぽい起こし方に彼は文句を言っていたが寝ている場合ではないのだ。
目をこらす柢狐はやがて音の正体を視認する。
近づいて来たそれは鳥の死骸の群れが出す羽音だった。まさか卯の“死体作り”が人間以外にも作用するとは。
「……これまずくね?」
「生き物の尊厳をこんなことに……」
「言ってる場合か 走れ!」
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作者名:クヴァール&くろのちか x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年7月8日 16時