26.Boy_思い出す ページ26
「それが、さっき見つけたんですよ」
彼女はそう言って、床に手をついて立ち上がった。扉の横にある、時計がかかっている壁に近づく。時計をずらせば時計があった場所に現れたのは黒く小さな取っ手だった。そこに手をかけて、下ろす。すると、少し音を立てて壁がずれ通路が開けた。
「...なにぼーっとしてるんですか。早く逃げますよ」
「あっ、はいっ」
主従関係が若干出来上がっていると感じながら重い腰を上げて彼女の元へ走る。その時、扉の開く音が聞こえた。誰かが部屋に入ってきた。
彼女は、僕たちを探す男の声に、眉間にしわを寄せた。「ちょっと先行ってて」
「え、でも」
「早く!」
小さな声でそう言い、僕の背中を押した。ここを通っても外に出られるかどうかは分からないけど、あの男に捕まったらもうあの部屋から出られないことははっきりと分かった。
だから僕はそのまま走って行った。頭はズキズキした。微かに、頰も。
そんなに通路は暗くはなかった。走っていれば扉が見えてきてドアノブに手をかける。一旦後ろを振り返ると、足音と共に「早く開けて!」と彼女の大きな声が聞こえた。急いでドアノブを下げて、奥に押す。音を立てて重く開いたそれの向こうの太陽に思わず目をつぶった。
「早く閉じて!」
開いたと思ったらこれだ。急いで閉じると、扉の向こうから男の声が聞こえた。これはやばいやつだ。そう思って彼女と急いで扉から離れた。どうやら僕たちが出たところは祭をやっていた場所の近くだったみたいで、すぐに人混みに紛れることができた。
「...っはあ、はあ、
...大丈夫ですか」
「...大丈夫、です。
私が捕まってる時、声をかけてくれてありがとうございました」
律儀に丁寧に頭を下げてくる彼女。「あ、いや、そんな。頭あげてください」そう言うと、ゆっくりと頭をあげた。
「あの、こんな時に言うのもなんですが、イデフィさんですよね」
「あっ、はい」
え、まさかのペン?この人ペンミにはきたことなかったよね?見覚えないもん。
微かに動揺していると、「あ、私はペンなわけじゃなくて、友達からよくあなたの話を聞くので名前と顔を覚えてしまって」
「あ、お友達が、ですか」
「はい。シン・Aって言うんですけど…ご存知ないですか」
「シン・A…?」
必死に痛む頭を回転させる。
まっさらなアルバムにサインペンを走らせる記憶が思い浮かぶ。
「...あ」
あの人の顔が浮かんだ。
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gumi - ルリアさん» お返事遅くなって申し訳ありません;; 今日は休みだったのでたくさん更新できました^^ はい!頑張ります! (2019年7月7日 17時) (レス) id: 0228b74d8d (このIDを非表示/違反報告)
ルリア(プロフ) - うわぁ!たくさん投稿してくれてありがとうございます!どんどん話が進んでって楽しくなっているのでこれからも頑張ってください! (2019年6月16日 11時) (レス) id: c7ec6efbc7 (このIDを非表示/違反報告)
gumi - ルリアさん» わぁー!ありがとうございます!嬉しいです!はい!更新頑張るので楽しみに待っていてください^^ (2019年6月16日 3時) (レス) id: 574c7b7109 (このIDを非表示/違反報告)
ルリア(プロフ) - すごく面白いので、もっと投稿して欲しいです!頑張ってください! (2019年6月15日 22時) (レス) id: c7ec6efbc7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:gumi | 作成日時:2019年6月15日 16時