太芥『うるさい』 ページ30
◆
太宰さん、太宰さんと、本当にうるさい。この子に私が今何をしているか分からないのだろうか。
私の執務室。私の机。そして私の後ろに立っている芥川君。
芥川君は言われたことは守ろうとするし(食事を除く)、可愛い。私服を着てこいと言っても私のあげた外套に手を通すのだ。
そして案外頑固なところもまた魅力だ。私に認められたいが故に必死になるあの顔は本当に可愛い。いや、どんな時でも可愛いけど、やっぱり私的にはあの表情が可愛い。
「太宰さん」
嗚呼、でもこの子は空気を読んでほしい。私は今大事な書類を書いている。書いたら厳重に保管しなければいけない大事な書類を。絶対に間違われない書類を。
それなのに芥川君といったらやっぱり先刻から太宰さん、太宰さんと壊れたラジオのように私の名前を呼んでいる。
可愛い。やはりこの言葉に行き着くのだが、何かが足りないのだ。ずっと無視していた私は意を決して控えめに言って女神な芥川君を見た。
「芥川君、太宰さん太宰さん煩いよ。“好き”の一言くらい云ったら如何だい」
なるべく真顔で、赤くなりそうな顔を必死に堪え、すぐに顔を背けてしまった。
それから数時間後に書類は完成し、太宰さんと呼ばれることはなかった。でも私は知っている。
顔を背けた後、芥川君が小さな声で「はい」と言ったのを。
♀♂♀♂
リクエストありがとうございました!
敦芥『ただでさえ可愛くて仕方ないのに。ドレスを着てるなんて、お持ち帰りのパターンじゃないですか』→←中芥『贈り物』
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羅生門 - 体が痛む。 (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - karadagaitam (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - karadagaitam (2021年4月5日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
kyo - 誰が見ても認める美貌の持ち主の芥川さんは、驚くほど食事の量が少ないので食べ残しは私が食べます。(きりっ) (2017年8月25日 10時) (レス) id: b8f51b6520 (このIDを非表示/違反報告)
なかゞわとまと - マジカルワールドさん» 本当に申し訳ないです…!ありがとうございます! (2017年6月10日 23時) (レス) id: 59e0ee862d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なかゞわとまと | 作成日時:2017年4月22日 1時