今も続く想い ページ11
随分と無神経なことを言ったのかもしれないが、Aとディミトリの話は以前聞いているため誰もが"そりゃそうだろうな"という顔で話を聞いていた。
「……もし、ディミトリさんが戦争に……」
そこでフレンはその先を言うのを拒んだ。しまった、という顔で恐る恐るAを見上げると、細めた目をしているAと目が合い、思わず目を逸らす。絶対怒っている、と分かったからだ。怒りのオーラが体中から発されているのが見えている。
「ご、ごめんなさい…!お気を悪くしてしまいましたわ。私ったら、なんて縁起でもないことを……」
『……別に』
頬杖をついていたAは片手をテーブルについて席を立ち上がり『先に部屋に戻る』と側近の二人に伝えてお疲れ、と言いながら食堂から去っていった。とても気まずくなった場所には、他学級の生徒たちの賑わう声が響いている。しかし青獅子の学級だけは静かだった。
「……フレンちゃん、どうしてあんなことを言ったの?」
こんな雰囲気の中でもジェミニはフレンに優しい口調で声をかける。一つだけ知りたいことがあったからだ。フレンがあんな不吉な事を言うなんてらしくない。何があっても人を傷つけるような事は言わない子が、どうしてあんなことを言ったのか気になったのだ。
「……私の大切な方は、私を裏切るつもりで仲良くしていたんですの。その方はもう死んでしまわれたのですけど、Aさんはその方にとても似ているものですからつい感情的になってしまって」
「……似てるね、僕たち」
ふいにジェミニがそんなことを言ったためフレンは「え?」と声を漏らした。ジェミニは切なそうな瞳を閉じて瞼の裏にある光景を映し出し、懐かしそうに語り始めた。
「僕にもいたんだ。大切な人が。その子はとてもAちゃんに似ていたよ。よく笑う子だった。……でも、戦争が起きてからは人が変わったようになって、争いを起こす原因となるものを排除するために戦争に参加した。僕はその子を止めることも守ることもできず、その子を死なせてしまったんだ。平和な世で生かしてあげたかったっていう想いが未だに残ってるよ」
「そうでしたの……」
彼女は望んでいたはすだ。平和な世界で生きることを。しかしそれは叶わなかった。世界の片隅で愛を叫んでもそんな願いは灰と化して消えてしまった。乱世ではなく治世であれば、その子は幸せにいつまでも笑顔でいられたのだろうか。
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楓 - 餅さん» ありがとうございます。入試頑張ってくださいね。分からないところを分かるまで解くのは本当に大変だということが分かります。二月の入試、応援しています。お褒めの言葉をわざわざありがとうございました。これからも頑張っていきます。 (2020年1月24日 17時) (レス) id: da7e11619f (このIDを非表示/違反報告)
餅(プロフ) - 合格おめでとうございます。私も2月の初旬に入試があり、今年度が中学最後の冬になる者ですが、書き方等が中学生のそれよりもはるかに高いのでまさか同い年とは思っておらず、現在とてもびっくりしております。学年末、頑張ってください。陰ながら応援しております。 (2020年1月23日 23時) (レス) id: 5c9f4852bc (このIDを非表示/違反報告)
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