ご機嫌斜めな一匹狼 ページ10
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『身分制度のある世の中なんて糞食らえ、とかよく聞くけど、上に立つ者がいなければ付いてくる者もいない。そうなれば内戦の始まり。人々は私欲を押さえることを苦手とするから戦争は限りなく続くんだよ。誰しもが心が広いというわけでもないし。』
そんな社会があるなら見てみたいよ、と言いながらAは何本か短剣をバラバラに真上へ投げた。落ちてくる短剣をいとも簡単にヒョイヒョイと寸前で避けていく。ディミトリは何か考え込んでいる様子のまま一向に顔を上げない。
『……別に貴方の考えを否定しているわけではないよ。現実性がないに等しいということを言っただけであって……そんな顔されても』
「ああいや、普段俺に対してあまり意見を言わないから少し考えさせられただけだ。」
『……まあ、貴方がどんな道を進んだとしても私は貴方を守るし、指示には従う。だから死に急ぎ野郎にはならないでね。』
私の兄は体の至るところを怪我をしていたから、と言いながら短剣を訓練場の壁に投げる。すると短剣は壁に抜き刺さり、壁付近を歩いていたフェリクスはピタッと足を止めた。『あ』と声を漏らすとフェリクスの視線はゆっくりAの方へ向き、ズンズンと歩み寄ってくる。
「短剣を投げるのは止めろと言っただろ!!何だお前は!!壁に短剣を刺していったいいくつ穴を開ければいいと思ってる!!毎度俺の前に短剣が飛んできて肝を冷やす俺の気持ちを考えろ!!」
『私は幼い頃から短剣を投げ合って遊んでたんだけどな。』
「恐ろしい女だ……というかお前はいくつ短剣を持ってるんだ。」
『二本だけ。あとは真剣とリボン。』
リボン?とフェリクスは眉をピクリと動かす。既に髪は結んでいるだろう?と聞かれて『ああ……』と言いながらとても長いリボンを取り出す。そしてリボンを見せながら淡々と話し始めた。
『リボンは水に浸して振り回して使うの。当たるととても痛いからってゼンお兄様に護身用に持たせられたんだよ。』
「お前の兄は何て凶器を持たせてるんだ。」
『イングリットにプレゼントしたら……』
「止めておけ。シルヴァンに被害が出る。」
凶器しかないAの持ち物を見て、顔をひきつらせるフェリクス。仕方ないだろう。これでも私は王女なんだ、と言えるはずもなく、『文句なら心配性の兄に言って』と言ってすぐ短剣を壁に向かって投げるのだった。
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イナアレオリ - 楓様この小説とっても読みごたえがあって私好みの作品です\(//∇//)\私のワガママなのですが,月光の姫の小説のパスワードを教えてくださいm(_ _)m月光の姫の小説も私のお気に入り小説なのでお願いします!ワガママ言って本当にすいません (2021年8月16日 23時) (レス) id: 2e62a84241 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - 冬木さん» その事に関しては一応以前伝えておいたのですが、更新と同時にページの関係で消しており、また後に時間がある時に修正する……という風に閲覧者様にはお伝えしていますので、しばらくお待ちください。 (2020年8月12日 9時) (レス) id: ffc3db4687 (このIDを非表示/違反報告)
冬木 - 国名とか主人公の苗字とかに赤髪の白雪姫の要素が入っているので、明記しておいた方がいいと思います (2020年8月12日 2時) (レス) id: 4c70962f8d (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - ねこみや梓さん» すみません、王妃であってます。ご指摘ありがとうございます (2020年6月7日 13時) (レス) id: ffc3db4687 (このIDを非表示/違反報告)
ねこみや梓(プロフ) - 主人公の母親は王女じゃなくて王妃だと思います。王女だと王様の娘という意味だったと思うので。間違ってたらすみません。 (2020年6月7日 12時) (レス) id: 376aefe0b2 (このIDを非表示/違反報告)
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