身内同士 ページ36
*
ドゥドゥーやディミトリと共にカトリーヌたちとの合流を試みてそちらへ向かう。シルヴァンやフェリクス、アネットたちがやったのか、通る道にはゴロゴロと死体が転がっていた。若い女、年老いた男性、老若男女問わず戦闘していたということが分かる。
目を叛けたくなるような光景を目の当たりにするが、進まなければいけない。弔いもできずにAは先を走る。そのあとをディミトリとドゥドゥーは追いかけるように走った。死体一つ一つに目を向けながら、小さく「すまない……」と謝って。
上空を飛んでいるイングリットに誘導されながらロナート卿の元に移動していくと、アッシュの声が聞こえてきた。嘆きに近いような声はだんだんと近づいてきて、ようやく姿が見えてきた。どうやらアッシュとロナート卿が戦っているらしい。
「ロナート様……もうおやめください!なぜ、こんな無謀な振る舞いを……!」
「レアは民を欺き、主を冒涜する背信の徒だ!大義は我らにあり、主の加護も我らにある!」
「だからって、こんなことは間違っています!街の人たちまで動員するなんて!」
「……ならば遠慮なく、刃をわしに向けよ!わしはもう、後には引けぬのだ……!」
アッシュは躊躇いながらも弓を引き、ロナート卿の胸に向かって射る。命中した時に聞こえたロナート卿の声がアッシュの耳に届き、顔を歪める。身内同士の打ち合いなど、アッシュが苦しむだけと思いAは剣を鞘から抜いて踏み出す。だが、ドゥドゥーに腕を掴まれて阻止された。
「……他者に身内を殺されるよりも、己の手で殺めるほうがアッシュのためだと思わないか?」
『身内を殺してアッシュが喜ぶわけない。それこそアッシュは自分を責めるはずでしょ。』
「その方がまだマシだろう、とで言っただけだ。」
『親を殺して9年が経った今でも後悔している者を、私は知ってる。そういう人を今まで何人も見てきた。親を殺したということを経験していない身で軽率な事を言わないで。』
Aはドゥドゥーに歩み寄りながら言葉を綴っていった。その言い方からして、まるでAは親を自分の手で殺めた、という風にしか聞こえない。ドゥドゥーは「殺したのか……?」と恐る恐る問いかける。禁句を発したのでは、と心配していたがAは至って普通だった。
『そうだよ。』
いや、普通ではなかった。笑っていた。
自分の親を殺したと言いながら笑っていたのだ。
42人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イナアレオリ - 楓様この小説とっても読みごたえがあって私好みの作品です\(//∇//)\私のワガママなのですが,月光の姫の小説のパスワードを教えてくださいm(_ _)m月光の姫の小説も私のお気に入り小説なのでお願いします!ワガママ言って本当にすいません (2021年8月16日 23時) (レス) id: 2e62a84241 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - 冬木さん» その事に関しては一応以前伝えておいたのですが、更新と同時にページの関係で消しており、また後に時間がある時に修正する……という風に閲覧者様にはお伝えしていますので、しばらくお待ちください。 (2020年8月12日 9時) (レス) id: ffc3db4687 (このIDを非表示/違反報告)
冬木 - 国名とか主人公の苗字とかに赤髪の白雪姫の要素が入っているので、明記しておいた方がいいと思います (2020年8月12日 2時) (レス) id: 4c70962f8d (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - ねこみや梓さん» すみません、王妃であってます。ご指摘ありがとうございます (2020年6月7日 13時) (レス) id: ffc3db4687 (このIDを非表示/違反報告)
ねこみや梓(プロフ) - 主人公の母親は王女じゃなくて王妃だと思います。王女だと王様の娘という意味だったと思うので。間違ってたらすみません。 (2020年6月7日 12時) (レス) id: 376aefe0b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ