霧中の叛乱 ページ31
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黒い炎、沸騰する大地。家屋はたちまち融解し、空気は燃え尽き、柱は倒れるよりも早く灰となった。あえて形容するならば___それは地獄であった。その奈落の中心に、"そいつ"は居た。そいつは人間ですらなかった。
獣。黒き獣だった。
四足歩行の獣。毛皮は炎、太い尾も炎、一対の瞳も、煉獄から吹き出したかのような炎であった。大きさや輪郭は、手足を地面についた人間に似ていた。だが、他のあらゆる点は人間を超えていた。何より存在感が違った。
天体や銀河が持つ、この世界の根源そのもののエネルギーが具現化した姿とでもいおうか。間違いなくいえるのは、そこには悪意はなく、怒りもなかった。感情の震えそのものがなかった。そいつはただそうしてあるから、そこに存在しているのだ。
その獣は、やがて力を使い果たして、その場に倒れ込み_______
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Aを慰めようの会も幕を閉じて翌日、
どうやら王国の小領主のロナート卿が、聖教会に対して兵を挙げたとの知らせが入り、後詰めの騎士たちと共に事後処理を手伝う、という内容らしい。すでにセイロス騎士団の先遣隊が彼の本拠、ガスパール城に向かっているうえ、ロナート卿の兵力は僅かなもののためすぐに鎮圧されるだろう、と先生は言っていた。
元々ロナート卿は教団に敵意を示していたからいつかはこうなると思っていたが、まさか自分たちが戦闘を行うハメになるとは。
どうやら同行する騎士を率いるカトリーヌという人物も来るらしい。彼女はセイロス騎士団の勇士だが、他の騎士たちも精鋭が揃っているため生徒の出番はほぼないに等しいのだろう。
『教会に刃を向ける愚かしさを生徒たちに学ばせるために、私達を手伝わせるといったところだと思う。』
「ああ、自分もそう考えている。だからといって無理に緊張することはない。焦りはかえって身を危険に晒すことがある。適度な緊張感を持って挑もう。」
適度な緊張感を持て、と言った理由はきっとこの戦いで死人が出る可能性があり得るからだろう。いくら先生がついているとはいえ、皆は実践慣れしていない身だ。流石に先生でも生徒全員を守ることは不可能に近いだろう。手の届く限りは守ってくれそうだが、甘ったれていられない。
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イナアレオリ - 楓様この小説とっても読みごたえがあって私好みの作品です\(//∇//)\私のワガママなのですが,月光の姫の小説のパスワードを教えてくださいm(_ _)m月光の姫の小説も私のお気に入り小説なのでお願いします!ワガママ言って本当にすいません (2021年8月16日 23時) (レス) id: 2e62a84241 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - 冬木さん» その事に関しては一応以前伝えておいたのですが、更新と同時にページの関係で消しており、また後に時間がある時に修正する……という風に閲覧者様にはお伝えしていますので、しばらくお待ちください。 (2020年8月12日 9時) (レス) id: ffc3db4687 (このIDを非表示/違反報告)
冬木 - 国名とか主人公の苗字とかに赤髪の白雪姫の要素が入っているので、明記しておいた方がいいと思います (2020年8月12日 2時) (レス) id: 4c70962f8d (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - ねこみや梓さん» すみません、王妃であってます。ご指摘ありがとうございます (2020年6月7日 13時) (レス) id: ffc3db4687 (このIDを非表示/違反報告)
ねこみや梓(プロフ) - 主人公の母親は王女じゃなくて王妃だと思います。王女だと王様の娘という意味だったと思うので。間違ってたらすみません。 (2020年6月7日 12時) (レス) id: 376aefe0b2 (このIDを非表示/違反報告)
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