慰め ページ29
*
何の匂いだろう、と匂いの正体を思い出そうとしながら食堂の中へと足を進める。するといきなり視界が何かで塞がれ、Aは肩をビクリと跳ね上げた。少しゴツゴツしている。だけど何だか生温かい。
『……コレ、シルヴァンの手?』
「ありゃ、お嬢さん勘が鋭いな。」
手の大きさと、ほんのり感じる匂いでシルヴァンだと分かったAは『いきなり何?』と目隠しされた状態で問いかけた。「まだ内緒です」とはぐらかされ、そのまま何故か椅子に座らされた。
『なんのプレイ?』
「あー、お嬢さん。プレイとかそういうのじゃないからさ……」
少し待っててよ、と言われてAは溜息をこぼし、仕方なく言われた通りに待つことにした。食事や講義以外でこうして椅子に座ることなどあまりないため、椅子に座って寛ぐということを実感する。走ったり跳んだりといつも足を使ってばかりだったからか、足に蓄積された疲労が取れたように感じた。
たまにはこういった休憩を取るのも大事なのかな、と思っていると急に視界が明るくなり、目の前には何故か大きなタルトが置かれていた。そして周りには
『これは……?』
「Aを慰めようパーティだよ!」
アネットはナイフで切り分けたタルトをお皿に乗せてフォークと共にAに差し出す。いきなりすぎて状況が読めないAは、一人だけパチパチと目を瞬きさせて辺りをキョロキョロ見渡していた。
「最近元気ないし、今日泣き顔で来てたから心配したんだよ。」
「だからこうして、みんなに協力してもらってパーティしようという話になったの〜。」
「ちょうど予定なかったしな。まあ、お嬢さんのためなら俺は予定が入っててもOKするつもりだったけど。」
『……わざわざ皆を呼び集めて?シルヴァンはともかく、よくフェリクスを呼べたね。』
心配してくれたのか、と思うと心がポワッと温かいココアを飲んだ時のように温かくなる。誰一人として来ていない人はおらず、稽古一筋のフェリクスも来てくれていた。
(お前が元気をなくして、剣の腕が落ちてもらっては困るからだ。お前は俺の稽古相手だからな。)
(フェリクス、こういう時くらい素直になれよ〜。お前の悲しい顔は見たくないんだ!つってよ。)
(……チッ。つくづく五月蝿い奴だな。)
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イナアレオリ - 楓様この小説とっても読みごたえがあって私好みの作品です\(//∇//)\私のワガママなのですが,月光の姫の小説のパスワードを教えてくださいm(_ _)m月光の姫の小説も私のお気に入り小説なのでお願いします!ワガママ言って本当にすいません (2021年8月16日 23時) (レス) id: 2e62a84241 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - 冬木さん» その事に関しては一応以前伝えておいたのですが、更新と同時にページの関係で消しており、また後に時間がある時に修正する……という風に閲覧者様にはお伝えしていますので、しばらくお待ちください。 (2020年8月12日 9時) (レス) id: ffc3db4687 (このIDを非表示/違反報告)
冬木 - 国名とか主人公の苗字とかに赤髪の白雪姫の要素が入っているので、明記しておいた方がいいと思います (2020年8月12日 2時) (レス) id: 4c70962f8d (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - ねこみや梓さん» すみません、王妃であってます。ご指摘ありがとうございます (2020年6月7日 13時) (レス) id: ffc3db4687 (このIDを非表示/違反報告)
ねこみや梓(プロフ) - 主人公の母親は王女じゃなくて王妃だと思います。王女だと王様の娘という意味だったと思うので。間違ってたらすみません。 (2020年6月7日 12時) (レス) id: 376aefe0b2 (このIDを非表示/違反報告)
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