答えを求めて ページ16
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『……それが今でも夢となって出てくる。夢だから心配しなくても大丈夫だよ』
やっぱり自分は臆病でまだ信じきれない心がどこかに残っていて、一度は言おうとしたが躊躇して言わなかった。この関係を崩したくない。それが私の願いだから。
「その事で自分を責めているのなら、違うわ。Aのせいじゃない。」
『……ううん。騙されていた事に気付かなかった私が悪かった。気づいていたらあんな事にはならなかった。』
その事件があってから、Aは強くなることを決めたという。今まで興味なかった剣の稽古に真面目に取り組み、言われた事はちゃんと従った。城を抜け出さなければ良かった、なんてたらればの話をしても過ぎた過去はもう変えられない。
『でも、あの事件があったからこそ私は騎士になろうと思えた。私が騎士じゃなければメルセデスとも出会えていなかったと思うよ。』
「……そう。でもねA、一つ聞いておくわね〜。その事件があって以来、きっと貴方は物事に対してあまり感情を持てなくなったんじゃない?」
『それは……』
確かに、あの事件があって以来Aは涙を流す事もなかったし、無意識に喜怒哀楽を表現することもなくなった。いつも無理矢理笑顔を顔に貼り付けていた。メルセデスの問いに答えられずにいると、彼女はAの肩にポンッと手を置き、笑みを浮かべた。
「精神的ダメージを負っても、そこから一人で立ち上がれた貴方はすごいわ〜。……もしかしたら今、私たちの事が信じられないかもしれないけど、困ったときくらい頼らせて。一ミリでもいいから信じてね。」
それじゃあね、と言って席を立ち扉に向かうメルセデス。扉に手をかけた瞬間『待ってメルセデス!』と珍しくAが声を張り上げた。メルセデスは後ろを振り返り、Aの真剣な表情を見て首を捻る。
『最後に一つ、聞きたいことがあるの。共にありたいと望んで、相手がそれに答えてくれた時、それが心からの返事だと、逆らえないから出た答えではないと私は信じられると思う?相手が自分を必要としてくれていると信じてしまえる程の相手に、出会えると思う?』
イザナに聞いても答えてもらえなかった問いに、彼女なら答えられるだろうか。それとも、彼女も笑顔で返すだけで何も言わずに背を向けて去ってしまうのか。その時のAの目は、答えを求める純粋な子供のような目をしていた。
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イナアレオリ - 楓様この小説とっても読みごたえがあって私好みの作品です\(//∇//)\私のワガママなのですが,月光の姫の小説のパスワードを教えてくださいm(_ _)m月光の姫の小説も私のお気に入り小説なのでお願いします!ワガママ言って本当にすいません (2021年8月16日 23時) (レス) id: 2e62a84241 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - 冬木さん» その事に関しては一応以前伝えておいたのですが、更新と同時にページの関係で消しており、また後に時間がある時に修正する……という風に閲覧者様にはお伝えしていますので、しばらくお待ちください。 (2020年8月12日 9時) (レス) id: ffc3db4687 (このIDを非表示/違反報告)
冬木 - 国名とか主人公の苗字とかに赤髪の白雪姫の要素が入っているので、明記しておいた方がいいと思います (2020年8月12日 2時) (レス) id: 4c70962f8d (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - ねこみや梓さん» すみません、王妃であってます。ご指摘ありがとうございます (2020年6月7日 13時) (レス) id: ffc3db4687 (このIDを非表示/違反報告)
ねこみや梓(プロフ) - 主人公の母親は王女じゃなくて王妃だと思います。王女だと王様の娘という意味だったと思うので。間違ってたらすみません。 (2020年6月7日 12時) (レス) id: 376aefe0b2 (このIDを非表示/違反報告)
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