強いて言うなら人選ミス【BLUELOCK】

10. ××× ページ10

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初めて彼女を見たのは中学一年生の冬だった


息を吸うと肺がきゅっと縮んだ
息を吐くと自分の熱が目に見えるように現れた


そんな、身体全体を刺すような尖った冷気が飄落する冬


▇



『え゛〜ん、も゛〜!!!!!』



ぱこん、ぱこん

シャンパンの栓を開けた時のような軽快な音と共に、癇癪を起こした子供のような泣きじゃくる声が自身の鼓膜に届く

仮声帯が震えた時に出るがなった声、かと思いきや少女の澄み切ったソプラノの声、その連続階調がやけに己の心の臓を掴むので、仲間の並ぶ列から外れて声の元へと走ったんだっけ






走った先にいたのは

テニスコートでひとりぼっち、ぐすぐす泣きながらネットの向こうへと自分の投げたボールをラケットで打つ辨天の人


ママの描くのとは別の、美しさだけを留めるためだけに筆を動かし続けた末に完成された絵画に似てると思った。

彼女の造形は、人の目を集める為に造られた芸術品に通じるモノがあるって直感的にそう感じたんだ。






＿なんであんなに泣いてるんだろう



泣くほど嫌ならやめればいいとまでは言わないけど、気持ちを入れ替える為に休憩とかすればいいのにって、そんなことを思いながらしばらく金網越しにその子を見てた。



_なんで゛!

_違う゛ぅ、…

_あ゛〜!もう腹゛立゛つ!!!



サーブ、壁打ち、素振り、よくわかんない動き、他にも色々。

時々しゃがみこんで癇癪を起こして、また立ち上がって練習

それを見てる間に分かった「あ、コレ自分に怒ってるんだ」って。思った動きができない自分に腹を立ててこんな色彩の失せた冬の季節にも関わらずひとりで練習してる、

う〜〜んでも何か違う気がする。絶対負かすって言ってるし誰かにこっぴどくやられちゃったのかも…？




ｶﾁｬ､




『え、』





しまった。


無意識に金網にかけた手から乾いた金属音が鳴りソレに反応して彼女がこちらに振り返り真黒な瞳が俺を認識した。

そしてそれと同時に羞恥からか顔に熱を集めて鳩が豆鉄砲を食らったような表情に変わる



『…どこ。どこから見てたの』



下唇を食み、流していた雫を拭い、眉を困らせて、けど瞳は敵対心が丸出しで。



『最悪、ねぇ何処の誰かは分かんないけどこの事誰かに言ったら許さないから』



何も透さない漆黒の瞳に飲み込まれそうになった。


＿＿


蜂楽「Aの瞳(め)底なし穴みたいに真っ黒!!」

『待って待って。ギブギブ指!!!入る!!潰れる潰れる!!!!』

＿＿


A

・忘れてる人。
・泣いてるのも練習してるのも見られたくないタイプ

＿
キャラ視点のような、三人称視点のような。

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