206. 絶 ページ23
嗤うワンダーワイス。
その背後から、刀が振り下ろされる。
京楽隊長の眼は、狂気に満ちていた
トッ、とその肩に銃口が触れる。
瞬き一つもしない間に、京楽隊長の体は閃光に包まれた
「…悪りぃな、ワンダーワイスが出てきたってことは、藍染サマがもう待てなくなっちまったってことだ」
「春水!!十四郎!!」
二人が落ちてゆく。総隊長が愛弟子の名前を叫ぶが、重症を負った二人にはもう聴こえてはいない
死なない程度。だが、瀕死。
死ぬことも許されず、痛みから解放もされない
ワンダーワイスが、息を吸った。
「おあああああああああああ!!!!!!!!」
激しい慟哭。
その瞬間、氷にヒビが入る
「!」
その瞬間、氷のヒビは鎖が解けたかのように勢いよく広まり、全てが砕け散った。
中から、凍り付けにされていたハリベルが姿を現わす
一方で、砕蜂隊長の卍解によって生死不明だったバラガンは、その悠然たる骸骨の姿を白煙の中から見せた。
「…そんな……馬鹿な_____…」
右腕を失ってまで倒した筈の敵が、また再び己の前に立っている。
認めたくない現実を前に、
「…狛村隊長…!!」
「ここはもういいです…行って下さい…」
死神は、焦りを見せる。
「…吉良」
「行って下さい!!!」
「いくら狛村隊長が僕等を守ってくれても…僕等だけが生き残っても…皆が全滅しちゃ意味なんて無いじゃないですか!!」
「行って下さい!!狛村隊長!!!」
ーーー“焦り”は禁物。
とはよくいったのもので、“焦り”は時に己を喰い殺す。だから死神は、どんな状況下に陥っても決して己を見失わない精神力を身につけようと日々鍛錬に励む
だが、その精神力を遥かに上回る絶望が襲いかかってきた時、その精神力やそれまでの努力は一切、無駄となる
ワンダーワイスが連れてきた怪物が、目玉のすぐ下にある火山の噴火口の様な場所から、目の前の炎に息を吹きかける
それまで延々と燃え盛っていた炎は、みるみるとその勢いを殺していった
.
「_____厭な匂いやなァ、相変わらず」
「同感だな」
「“死の匂い”てのは、こういうのを言うんやろね」
「結構な事じゃないか、死の匂いこそ、」
「この光景に相応しい」
残火から現れた“絶望”は、その存在の脅威を、再び弱者に知らしめる
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作者名：EGOIST | 作成日時：2016年10月25日 18時
