203.羨望 ページ20
手首を掴まれたと同時に、
黒い斬撃が己を斜めに切り裂く。
その衝撃に堪え兼ね、後方へ吹き飛ばされそうになるのを地面に接した足の裏の摩擦力で防いだ
小さく砂埃が舞う。
「…殆ど斬れてねえ…」
「鋼皮(イエロ)ってやつか…やっぱり硬えな」
さっきの攻撃で身体は斬り裂かれなかったが、代わりに白装束が裂かれた。
白い胸に空いた孔と“4”と刻まれた間に、うっすらと血が垂れている。
ウルキオラは、傷口を指先で撫で、僅かな出血を確認した。一護との戦いで初めて流したものだ。
だが、以前、顔色に変化は無い
「けど、どうも以前(まえ)よりてめえの動きは“読めるようになった”みてえだ」
「…何だと?」
「…以前に戦った時のてめえは、動きが全く読めなかった…攻撃も防御も反応も速度も方向も…どこからも何も読み取れなかった…まるで、機械か石像と戦ってるみたいな気分だった…」
「それが読み取れるようになったのは、俺が虚に近付いたのか…」
「それとも、てめえが人間(オレ)に近付いたのかも知れねえな」
ーガン!!!!
音速を超える様な速さで床に突き刺された剣が、その巨大すぎる衝撃で地面の一部を波のように浮き上がらせる。
自分の姿が鏡のようにはっきりと映りそうなほど綺麗だった床の下に隠れた、硬い岩が姿を現した。
「…俺が…お前等人間に近付いただと…?」
「…成程」
「この程度のレベルについて来れるようになった事が、余程気分が良いらしいな」
※
【四十二巻】
犠牲無き世界など ありはしない
気付かないのか
我々は
血の海に 灰を浮かべた地獄の名を
仮に世界と
呼んでいるのだ
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作者名：EGOIST | 作成日時：2016年10月25日 18時
