200.傷付くことは、わかっているのに。 ページ17
「今、一瞬霊圧が乱れたな」
刃を交えながら、ハリベルに指摘される。
平然と話していながらも、依然、刀から伝わってくる重く強い重圧に変わりは無い。
「…何の話だ」
「何があった」
「知らねえな」
氷輪丸から氷の斬撃を放つ。それをハリベルは軽々と躱し、飛躍した。
「(雛森………)」
距離が開き、ハリベルが即座に刃を向けてくる気配は無い。そうなると、つい、考える時間ができてしまう。
その時に浮かび上がって来た幼馴染の彼女は、酷く疲弊しきっていた。
大切な人に裏切られ傷付けられておきながら、尚、命を助ける事を渇望した。自分は血を流されておきながら、彼が血を流す事を拒んだ。
「(……)」
また、それと同時に脳裏をほんの一瞬過ぎった、もう一人の幼馴染の顔。
「(…)」
「(なんで来ちまったんだーーー…)」
.
ふと、見知った霊圧が肌を刺激する。
それは、とても懐かしいものだった
「…」
来たのか。この戦場へ。
四ヶ月ぶりの再会だ。懐かしむものでもそれ以外の何でも無いが、心をズタボロに引き裂かれた彼女がどんな戦いをするのか、愉しみでもある。
きっと、藍染隊長も気付いているだろう。
かと言って、あの人が四ヶ月ぶりに再会するかつての部下に、何の思いも抱かない事はわかっているが。
「ーーー…」
そうすると、冬獅郎は、この事をどう思っただろうか。
…きっと、あの優しく思いやりに満ちた彼の事だから、彼女が再び傷付く事を予測して、何故来たのだと内心焦っているのだろう。
傷付く前に護らなければ。そうやって、義務感と親愛の情にかられていることだろう。
「…くだらない」
彼も暇だ。戦いに感情など必要無いのに。
彼女も愚かだ。まだ、藍染“隊長”を心の片隅で生かしている。
ーーー戦いは虚無であって、“隊長”など最初からいないのにーーー
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作者名：EGOIST | 作成日時：2016年10月25日 18時
