32話 ページ35
「僕も早く状況わ確認せねばと思い、急ぎロンドンへ来たというわけだ。」
説明を終えたシエル君。
そんなシエル君に、劉さんがふっ、と笑った。
「女王の番犬が、なにを嗅ぎつけるのか我もとても興味深いな。…だけど、君にあの現場を見る勇気があるのかい？」
「…どういう意味だ。」
「現場に充満する闇と獣の匂いが、同じ業の者を蝕む、足を踏み入れれば狂気に囚われてしまうかもしれないよ。…その覚悟はあるのかい？ファントムハイヴ伯爵。」
スッとシエル君に近づく劉さん。
しかし、シエル君は恐れることもなくまっすぐ言い放つ。
「僕は彼女の憂いを掃うためにここに来た。くだらない質問をするな。」
齢幾ばくも行かない少年に、そんな目をさせるような世の中を、私は少しだけ嫌った。
「そうと決まればすぐに行こうじゃないか伯爵！！」
先程の、少し棘のある言い方、そして真面目な雰囲気をふっ飛ばすかの如くケロッとした劉さんが、シエル君の手を引いて立ち上がった。
「ちょっと！！！男ってのはせっかちね！お茶くらいゆっくり飲みなさいよ。私も行くわ。…現場って何処なのよ劉。」
呆れたように言うマダムに、私も少しだけ同意する。
「知らないのかい？マダム。…じゃぁそのへんの人に聞いてみないとだめじゃないか。」
「アンタ今まで知らないで喋ってたわけ？！」
ヤレヤレ、といった風に言う劉さん。
こればっかりはマダムの叫びに酷く同情した。
「…落ち着け。誰も現場に行くとは言っていない。」
「「え？」」
深くため息をつくシエル君に、マダムと劉さんの二人が反応する。
私も、二人と同じように首を傾げた。
「どうせすでに野次馬だらけでろくに調べもできんだろう。僕が行けば警察もいい顔をせんだろうしな。」
「じゃあどーすんのよ。」
「伯爵…まさか…」
「そのまさかだ。…僕もできるなら避けたい道だがやむをえん。こういう事件に奴ほど確かな情報を持ってる奴はいないからな。」
私はすこしだけ、疎外感に包まれながら話を聞いていた。
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お餅 - 執筆意欲無くされてしまいましたか？残念です。 (6月30日 21時) (
レス) id: ed46a196c0 (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - 無理強いではありませんが、続きよみたいです。 (6月30日 20時) (レス) @page47 id: ed46a196c0 (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - 来春更新……、からもう三回目春が終わってしまいましたね… (6月30日 20時) (レス) @page47 id: ed46a196c0 (このIDを非表示/違反報告)
箱 - 素敵な作品ありがとうございます (5月29日 22時) (レス) id: 4edc0c80af (このIDを非表示/違反報告)
みるく(プロフ) - 葬儀屋の嫉妬というか夢主ちゃんに対する執着心が上手く表されており、読んでいて凄く楽しかったです！とても好きな作品なので更新再開楽しみに待っております。 (2022年8月4日 15時) (レス) @page47 id: a995b7f6e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朔夜 | 作成日時：2018年2月13日 9時
