22話 ページ24
『……はぁ。』
思わずすっと出てきてしまったものの、外はとっくに日が落ち月が登り、風が冷たい。
いくら膝にショールを掛けていたとしても身体は冷えていく一方だった。
車椅子から眺める月は、昔より一段と遠くなった気がして少しだけ心が痛む。
『幸せそうだったな……。』
例え決められた許嫁という関係であっても、あの二人はとても幸せそうだった。
優しさに溢れ、愛に溢れ。
お嬢様のした事は決して許される事ではなかったはずなのに。
『…アンダーテイカーさん…。』
ぽつりとつぶやいた名前は、勿論返事など無かった。
『ふ、…ぅ…』
孤独に戻るということがあまりにも辛く、寂しく。
涙が溢れて止まらなかった。
たった一人の、私の大切な人。
家族以外で初めて自分を受け入れてくれた人。
会いたい。
貴方に、会いたい。
『会いたい…です…アンダー…テイカーさんっ…』
声に出さずにはいられなかった。
いつか…いつか必ず、彼に届くと信じて。
『……っ、』
胸元の、丁度心臓辺りにある細い傷に触れる。
生まれつきある、原因不明の傷跡。
それだけが、今の自分にとって唯一彼と過ごしたことの証だった。
『……。(この傷はきっと、あの人が私の約束を守ろうとした印。…だから私は、信じてます。それに貴方は…』
きっと、どんな手を使ってでも自分を探し出してくれる。
そんな気が、している。
「…こんなところにいたのですか、チヒロさん。」
『っ、せ、セバスチャンさん…』
少しして、やっと涙が止まりそろそろ屋敷に戻ろうとしていた頃、突然後ろから声をかけられた。
声の主はセバスチャンさんで、私が振り向くと彼は少しだけ疲れたような顔をしていた。
その疲れの半分くらいは予想がつく。
「いつの間にかいなくなっていたので…驚きました。」
『すみません。少し風にあたりたい気分だったので…。』
お互いの黒い髪が、風で靡いた。
屋敷に戻ろうと、車椅子を動かし彼に近づく。
『…どうかしました？』
「…泣いていたのですか？」
『えっ……っ！』
私が近づいても歩きだそうとせず、じっと私の顔を見つめるセバスチャンさんを不思議に思い、見上げたときだった。
セバスチャンさんが少しかがんだと思いきや、突然グッ、と顎を引き寄せられた。
真紅の瞳と嫌でも目が合う。
一体、コレはどういう状況なのだろう。
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お餅 - 執筆意欲無くされてしまいましたか？残念です。 (6月30日 21時) (
レス) id: ed46a196c0 (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - 無理強いではありませんが、続きよみたいです。 (6月30日 20時) (レス) @page47 id: ed46a196c0 (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - 来春更新……、からもう三回目春が終わってしまいましたね… (6月30日 20時) (レス) @page47 id: ed46a196c0 (このIDを非表示/違反報告)
箱 - 素敵な作品ありがとうございます (5月29日 22時) (レス) id: 4edc0c80af (このIDを非表示/違反報告)
みるく(プロフ) - 葬儀屋の嫉妬というか夢主ちゃんに対する執着心が上手く表されており、読んでいて凄く楽しかったです！とても好きな作品なので更新再開楽しみに待っております。 (2022年8月4日 15時) (レス) @page47 id: a995b7f6e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朔夜 | 作成日時：2018年2月13日 9時
