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廊下 ページ2

開け放された病室のドアから廊下を覗くと、190と医者が退治しているのが見えた。
 医者の背後にはストレッチャーに拘束された患者がいる・・・・・・が、どうやら気を失っているらしい。外傷らしいものはない。

「あのスプレーです。医者が患者に吹いて、すぐに昏倒しました」

「なるほどな」

 アラサーが俺たちに説明する。
 すると、心配そうにコーラが言った。

「じゃああのデカい人大丈夫なんですか?」

 次の瞬間、医者がスプレー缶を190に向ける。

「死ねえ!!」

 殺意しか感じない一言。
 しかし、咄嗟に動いた190は速かった。

「うおおおお神回避!!!」

 ガッツポーズを決める190に対し、医者は焦った様子で缶を取り落とした。
 目線を向けてきた190に驚いたのか、医者は俺たちの間を走り抜け、屋上への扉を開いて逃げて行った。

「お、あいつ缶落としてったぞ」

 雑魚乙〜、と呟く190に近づき、缶を取る。

「催涙スプレーか。一回くらいは使えそうだな・・・・・・てかお前、何かやってた? スポーツ的なの」

「えっ! よく分かりましたね、俺はベトナム戦争の帰還兵で」

「屋上か、おいデカいの、一緒に来い」

「聞けや」

 アラサーが屋上につながるドアを指差す。
 ちらりと覗いて、言った。

「ダメですあれは、ブラックエッグもう一個とやばい医者しかいない」

「何人?」

「ざっと十数人」

「無理だな、コレだけじゃ」

 手元の缶を振って見せると、アラサーが軽く頷いた。
 あれ、とコーラの声がした。

「ここの病室、爺さんひとりだけだ」

 コーラはずかずかと俺らの隣の病室へ入って行く。402号室。

「すみませーん、大丈夫ですか? どうして他の人がいないんですか?」

 老人は焦点の合わない目をしていた。布団にくるまり、膝を抱えてこう言った。

「お医者様達が皆を連れて行ってしまった」

 そう呟き、混乱したように髪の少ない頭を掻きむしった。

「落ち着いてください! 大丈夫ですか!?」

 コーラが呼びかけると、年老いた患者は「もうすぐ、あの方が君達を受け取りに来る」と言って、また布団に入りなおした。

「・・・・・・あの方?」

 コーラは考えを巡らせていたようだったが、わからん! と叫び、手に持っていた床に空の容器を叩きつけた。まだ持ってたんだ。

エレベーターホール→←病室401



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作者名:上下水道 | 作成日時:2023年9月23日 0時

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