- - . あと何回 ページ28
.
今日、俺は体調を壊した。
「っけほ、げほ……ぅ"、」
「ん、ほら、」
大丈夫、大丈夫と火照った背中をゆっくり摩ってくれた拍子に、数時間前に口にした少量の物を戻す。肺や喉の奥が痛くて痛くて胸を抑えていると、横から抱き締められたまま水を渡された。
なんで、何でこうなったんだろう？
体調には人一倍気遣っていたし、手洗いやうがいも欠かさなかった。でも、それでも俺は今、体調不良故に嘔吐して。情けない。
「ん"……も、大丈夫、ありがと」
「んーん、気にしないで。……歩ける？」
身体を支えて貰って、何とか立ち上がることには成功したけど……頭が痛い。目の前が回るようで、ここに来るまでは大丈夫だったのに、歩けなかった。
ぽすん、とふらついた俺を受け止めたAは、また俺の背中を摩る。歩けないことを分かってくれたらしい。
誰か呼ぶのかな、とそのまま彼女の腕の中で待っていると、何度か悩んで唸ってから俺の肩甲骨辺りに手を添えた。なんだろ…？
「うーん、今誰も来れないみたいだから……ごめんねそらるさん。少しだけ、我慢していてください」
「……わ、ｯ」
俺がAの言った意味を理解しないうちに、膝の裏に腕が回され、突然の浮遊力を得てふわっと前髪がサイドへ散った。ギュッと力を込められて安定した隙に目線を上げると、彼女の顎下と長い睫毛を越して天井が見える。
へ？……お、おれ、今、お姫様抱っこされてる……？
「最小限にするけど、少し揺れるし、気持ち悪くなるかもだからなるべく私に身体寄せて。余裕があれば腕も回してくれると安心出来るんじゃないかな。……あと、目、閉じてていいよ
大丈夫。すぐ着くから」
更に熱量を増した頬と背中。至近距離かつ密着するAに、俺はこくんと頷いてからそっと首に手を回した。汗で濡れた指先で感じる滑らかな肌。情けない俺に許された、特権。
ぎゅっと目を瞑って振動に耐えた。時々ぐるぐると俺の世界が回るのに、気持ち悪くてつらいのに、こんなにも安心出来る理由は恋心一つだけ？
(顔色悪いって気付いてくれたのも、つらい時にわざわざ買ってきた飲み物をくれたのも、休憩時間を間に多く取るようにスタッフさんと掛け合ってくれたのも、)
嗚呼、俺はあと、何回あなたに恋をすればいいんだろう
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 380人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆみか(プロフ) - 初コメ失礼します！ifの性別転換？のやつって消したんですか…？ (2019年9月23日 8時) (
レス) id: bac69d1b88 (このIDを非表示/違反報告)
塊(プロフ) - いえいえ！こちこそ！ありがとうございます！！！！ (2019年9月21日 6時) (レス) id: e61a9fc895 (このIDを非表示/違反報告)
塊(プロフ) - ええ！？いえいえ！謝らないでください！結構あの、お話が好きだったため衝動的にコメントしてしまっただけなので！気にしないでください！すみませんでした！強いて言うならまふまふさんとの絡み見たいです！欲張りですみません！ (2019年9月17日 19時) (レス) id: e61a9fc895 (このIDを非表示/違反報告)
塊(プロフ) - えぇぇぇええ！削除しないでくださぃぃいいいい！！ (2019年9月11日 13時) (レス) id: e61a9fc895 (このIDを非表示/違反報告)
yukakonaito39(プロフ) - リセちゃん好きすぎてつらいぃ← リセちゃんになりたい人生だったああああああ!! (2019年8月23日 22時) (レス) id: 78fb0dccf8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：颯夢 | 作成日時：2019年7月25日 15時
