31. ページ34
side……キヨ
泡がふよふよと浮き上がるように唐突に思い出したそれに内心、やべぇ、と冷や汗をかいた。
いや、部屋が汚ぇとか俺今熱あんじゃんとかそんなことじゃなくて、リセを名乗るこいつに何も知らせずにいたことだ。俺的にはまふまふが相手なら全然問題ないけど、A的には戸惑うだろうし……
しかし、こいつは俺の一瞬で沸き起こった心配事を見事に一蹴することとなる。
「ま、マジか。もっとちゃんと男っぽくした方いいかな……？」
「……ん？？」
「……キヨ？気持ち悪くなった？何か袋」
「い、いい！いい！いらねぇ！！」
そうだったそうだった。Aはそういう奴だった。心配な事程、こいつは軽く対応してくれるんだったわ。そしていっつも俺が心配して損すんだよそうだったわ。
「？」
「いーや、なんでもね。普通にしてればそうそうバレねんじゃね？」
「確かに」
「だろ？」
「……あ、まふで思い出した。そうだそうだ、あのね、」
何、と返すと少し険しい表情をするA。
不安は募るが……まぁ俺とて心当たりが無い訳では無い。大体予想はつく。
「私今、ネット上で"歌い手"になってて」
俺としても複雑だった。
Aが言う複雑な心境とは違う、俺にしか分からないだろう複雑な気持ち。
彼女が歌い手として世に出るのはAの意志次第だ。俺がどうこうの話じゃない。
けど、そうなれば必然的に……
「嫌なの？」
「……分からなくて」
それこそ、溜め込んで壊れるAのストレスに加算されてしまうのでないか。
何せこの界隈だ。人気が出る、知名度が上がるということはそれに比例して、批判や偏見を持つ人が増える。過激なファンだって出てくる。
……発言一つが、全てを壊す。
かつてそれで友人をこの界隈から失った俺としても、決して勧める道ではない。
それに、他の歌い手達も更にAを知るだろう。家族以外で彼女の素性知っていて、仲がいいという優越感のそれが、俺の心で黒く渦巻いた。
でも。
「……
やりたいようにしていいんじゃない？唯一それが許されてんだし。……才能あんのにもったいねーし」
俺がそれを止めるのも、違う。
何処かでずっと思っていた。いつか一緒に動画を撮れたらとか、いくら自由度の高いこの界隈でも難しいことを。今回のことで、それに近付けるのは事実だ。
……それに、彼女の意志を奪うつもりもない
丁度その時、チャイムが鳴った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1098人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あーやんの向日葵畑(プロフ) - とても素敵な作品でした！良きです！もしよければ続編のパスワード可能でしたらお聞きしたいです、無理しない程度に頑張ってください！ (2020年1月12日 15時) (
レス) id: 6889ca0c35 (このIDを非表示/違反報告)
みこっち - めっっっっちゃっっっっくちゃ好きです！！！ドストライク！！！続き楽しみにして待ってます！もう犬のように！！ (2018年11月23日 21時) (レス) id: ef17909c6a (このIDを非表示/違反報告)
すずらん - 評価300を301にしてしまった罪悪感← 勿論10を押させていただきました！ (2018年11月19日 0時) (レス) id: a3f3cd9373 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - 移行お願いします！ (2018年11月11日 17時) (レス) id: d404cb0bcc (このIDを非表示/違反報告)
祈る海星(プロフ) - 続きがとてもみたいのですが…ばけモノ様の無理のしない程度で！！！！！お願いします！！！ (2018年11月10日 22時) (レス) id: b8b471cbff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ばけモノ。 x他1人 | 作成日時：2018年8月13日 15時
