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「……うーん」
所変わって此処はキヨの家の玄関前。
いつも通りチャイムを押そうと手を伸ばしたが、今回ばかりはその手を引っ込めてしまう。腐っても病人だ。寝ていたら悪い。
気づいて、なんて期待を込めて取っ手を引いてみても……ガチ、と静かに鳴るだけで、中から何も物音はしなかった。
さて、どうするA選手。
困ってスマホを起動させてみる。……すると、吹き出しマークの右上に赤い丸に白で【2】と書いてあることに気づいた。
キヨ来たらチャイム押せ
……よ か っ た ん か い
既読をつけた直後、私は躊躇いなくチャイムのボタンへと向かった。
ピーンポーン
…
少し時間が経ってから、ゆっくりとドアが開く。
「……よっすー…」
「ごめん立たせちゃって、大丈夫?」
「おー……うん、気にすんな」
動画内で聴くキヨとの異常なテンションの違いに違和感を感じながら、私は玄関へと足を踏み入れる。……二重人格疑われる普段のキヨって、もしかしなくてもこんな感じ?
ぼんやりしたような声と顔。思った以上に熱が高いのかもしれない。
途中彼を気にかけて、弱々しく揺らぐ体を支えた。タダでさえ彼は細身の長身なのだ……見ていてとても怖い。
慎重に廊下を歩き、彼の部屋の中まで来てからベッドに下ろす。「サンキュー」とぶっきらぼうに低く呟くキヨを見てから、自分の女子力の無さに気がついた。
……運ぶ時、完全に男友達じゃん
…
いや、相手はキヨだ。下手に女子でいるより、男友達的存在でいた方が彼にとって楽だろう。それに今更だ。女子力は無い自信がある。
「……そもそも女子力の高い運び方って何だろう」
「何か言った?」
「いや何も」
それからは、何も食べていないというキヨにゼリーを食べさせた。
多少躊躇ってはいたものの、差し出したゼリーを口にしてくれたのは有難い。普段大食いの彼からは考えられない程ゆっくり咀嚼していて、ちょっと面白かったのは内緒で。
ごくん、と丁度飲み込んだ頃、キヨはまた口を開く。
「……あ」
「ん?まだ食べれる?」
「んや……今思い出したわ」
「何を?」
少量だけ掬ったゼリーを乗せたプラスチック製のスプーンを、カップの上に置く。
「そいやぁ今日、まふまふってやつ来るんだったわ」
しかし、そんな爆弾発言のせいで私はその状態のまま静止してしまった。
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あーやんの向日葵畑(プロフ) - とても素敵な作品でした!良きです!もしよければ続編のパスワード可能でしたらお聞きしたいです、無理しない程度に頑張ってください! (2020年1月12日 15時) (レス) id: 6889ca0c35 (このIDを非表示/違反報告)
みこっち - めっっっっちゃっっっっくちゃ好きです!!!ドストライク!!!続き楽しみにして待ってます!もう犬のように!! (2018年11月23日 21時) (レス) id: ef17909c6a (このIDを非表示/違反報告)
すずらん - 評価300を301にしてしまった罪悪感← 勿論10を押させていただきました! (2018年11月19日 0時) (レス) id: a3f3cd9373 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - 移行お願いします! (2018年11月11日 17時) (レス) id: d404cb0bcc (このIDを非表示/違反報告)
祈る海星(プロフ) - 続きがとてもみたいのですが…ばけモノ様の無理のしない程度で!!!!!お願いします!!! (2018年11月10日 22時) (レス) id: b8b471cbff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ばけモノ。 x他1人 | 作成日時:2018年8月13日 15時