〝運命〟ということ【YG】 (ページ29)

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｢現実は、辛いので
少しでも、忘れたくて……｣

A「そっか…」

隣にいるAさんは

壁に背をつけて上を見る

A「今は？」

「え？」

A「今は、どう？
音楽が好きな理由、変わった？」

「今は……
元気をもらったり、慰めてもらったり
色々……」

A「それなら、それでいいよ
音楽は無限の可能性があるからね
辛い時、死にたい時
ユンギくんを助けてくれていたのは、音楽なんだね」

「…… Aさんも」

A「え？」

「Aさんもです……」

A「……」

「辛い時も死にたい時も
あの時のAさんが、思い浮かんで」

て、何喋ってんだ俺

「な、なんでもないです」

A「そっか
嬉しいな…」

そう言って笑うAさん

A「俺も、辛い時死にたい時
ユンギくんの事、考えてたよ」

「え……？」

A「ふふ
よし、帰ろっか」

そう言って立たせてくれたAさんの手が

異様に熱く感じて

ドキッとした心臓に

抗うように、お冷を体に流し込んで

外に出た

「Aさんも…死にたくなる時、あるんですか」

俺を引く手を握り返しながらそう聞くと

振り返ったAさんは

とても儚げに笑っていた

A「あるよ」

その瞳の奥には何があるんだろう

Aさんが抱えているものってなんなんだろう

それを知りたいと思う俺も

なんなんだろうな

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