43話 ページ9
Aの部屋の前には、監視の為に置いていた黒服が二人とも倒れていた。
どちらもがたいの善い男だったが、Aを育てたのは他ならぬ中也である。たかが一介の構成員程度に負けるような育て方はしていない。
内側からは開けない筈の扉も、半開きになっていた。
そして部屋の中からは、彼女の服裏に付けてあった発信器が破壊された状態で見つかった。
「裏階段と潜入用経路は!?」
「白星Aの姿、確認できません!正面玄関も同様です!」
「個室も凡て調べさせていますが今のところ報告ありません」
「昇降機(エレベーター)も全部止めて映像確認しろ!」
「構成員に混じってる可能性も考えられます!如何ないさますか」
禁忌区域への侵入を報せる警報とは違う音のアラームが鳴ったことで、本部は上へ下への大騒ぎにだった。
"幻夢の黒薔薇"が捕縛された事は、既に本部全体に報告されている。
廊下や裏口など、そこらじゅうで構成員が走り回っていた。
そんな中で、中也は首領室を訪れていた。
「うーん、流石は大宰君が育てただけのことはあるねぇ。まァ予想はしていたけど」
思ったより早かったねぇ、と森は笑った。
その姿はさながら、反抗期の娘に手を焼いている父親のようだった。
森とて初めからAが部屋で大人しくしているとは思っていない。
あのお転婆娘のことだ。あの手この手でこっちの拘束の穴を縫ってくるに違いないと考えていた。
しかし、その為の保険はもう既に賭けてある。
「劫説中也君、手応えは如何だい?」
云われて、中也は下げていた頭を上げて口を開いた。
「…はい。警報が鳴ってすぐ、Aに異能を発動しました。
手応えはあったので、そう遠くには逃げていない筈です」
そう。Aは捕らえられる時、中也に触れていた。
故に彼の異能、"汚れちまつたかなしみに"の発動対象である。
部屋の重錠とセンサー付きのリング、そして発信器に加えて、中也の重力操作の4重拘束。
たかが二十歳そこらの女性を拘束するには充分過ぎる警備だ。
だが必要なことだった。それだけじゃ足りないくらいに。
目を逸らすと、まるで幻想のように姿を消してしまう。
手をのばせば、まるで夢のようにすり抜けてしまう。
正に"幻夢の少女"。
そんな彼女だから。
「___縛り上げてでも、連れ戻して来てくれ給え」
「了解しました」
自分達の手の内から、消えてしまう前に。
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ちょっとすごいしじみ(プロフ) - コメント欄から失礼します。そーっと帰ってきました(小声)。だいぶ時間が出来たので、今まで書き溜めたシーンを繋げてゆったり投稿を再開します。どうか気長にご覧いただけると嬉しいです。 (2020年12月25日 23時) (レス) id: da54526cc7 (このIDを非表示/違反報告)
しらゆき - 更新待ってます! (2020年5月9日 3時) (レス) id: 5efd194ceb (このIDを非表示/違反報告)
ちょっとすごいしじみ(プロフ) - 流界さん» 大変遅くなりましたが帰って参りました。ダラダラ更新になってしまうと思いますが皆さまに楽しんで頂けるよう精進して参りますので今後もよろしくお願いします。 (2018年5月1日 23時) (レス) id: da54526cc7 (このIDを非表示/違反報告)
流界(プロフ) - 初めまして!僕この作品大好きなので応援してます!!更新頑張ってください!(*´ω`*) (2018年4月17日 21時) (レス) id: ff8d2998f0 (このIDを非表示/違反報告)
サクサクしないクッキー - 14巻買ったんです!いやもうヤバすぎて爆転思想。 (2017年12月11日 14時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:@ちょっとすごいしじみ@ x他1人 | 作者ホームページ:http://asdfghjkl
作成日時:2017年11月9日 19時