42話 ページ8
*
「人虎がどうとかの話なら芥川が仕切ってた。奴は二階の通信保管所に記録を残してる筈だ。
…用を済ませて消えろ」
話は終わりだと踵を返して立ち去ろうとする中也に、「あ、そうそう最後にもう1つ」と声をかけた。
「Aの事だけど」
「…あァ、もう彼奴は手前がどうしようと探偵社に戻れやしねえさ、諦めろ」
――光の花は、暗い闇でこそ映える。
Aはマフィアにいるべき、いやいなければならないのだ。
能力云々の話ではない。戦力云々の話でもない。
"白星A"という人間が必要なのだ。
そもそも今回の鎮圧任務だって、それこそAがいれば半年もかからなかった筈なのに。
彼らが、自分たちが、たった一人の少女の為にそこまでするのは、決して難しい理由ではない。
好きだから。彼女の持つ不思議な魅力に、惹かれてしまったから。
たった、それだけの理由。
「…ふふ」
本人が気付いているかどうかは定かではないが、言葉の節々に独占欲が見え隠れしているのを感じて、太宰は小さく笑った。
「中也、君は何か勘違いしてるみたいだね」
「は?」
太宰チッチッチと舌を鳴らして指を立てる。
何を言い出す心算だと中也は目付きだけで人を殺せそうな程に太宰を睨むが、其れを受け流すように話を続けた。
「Aにこの裏社会での生き方を教えたのはこの私だよ。
如何なる状況での解錠法や脱出法もある限り叩き込んである。そう例えば…」
――センサー付きの首輪をつけられて、尚且つ鍵付きの個室に軟禁された場合の脱出法とかね。
「…あ?」
寒気がするほどの善い笑顔に、中也は怪訝そうに眉を寄せた。
「(…いや」)
不可能な筈だ。
あの部屋はA一人の力で開けられるような代物では無いし、錠も複雑なものを選んだ。
それに首元で見えない状態での解錠は簡単ではない。
いやそもそも、あの部屋の前では黒服が見張りをしている。
不可能な筈、なのだが。
「…冗談だろ」
「ふふ。あの子は本当に優秀な部下だよ」
―――建物中に、けたたましい警報音が鳴り響いた。
467人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょっとすごいしじみ(プロフ) - コメント欄から失礼します。そーっと帰ってきました(小声)。だいぶ時間が出来たので、今まで書き溜めたシーンを繋げてゆったり投稿を再開します。どうか気長にご覧いただけると嬉しいです。 (2020年12月25日 23時) (レス) id: da54526cc7 (このIDを非表示/違反報告)
しらゆき - 更新待ってます! (2020年5月9日 3時) (レス) id: 5efd194ceb (このIDを非表示/違反報告)
ちょっとすごいしじみ(プロフ) - 流界さん» 大変遅くなりましたが帰って参りました。ダラダラ更新になってしまうと思いますが皆さまに楽しんで頂けるよう精進して参りますので今後もよろしくお願いします。 (2018年5月1日 23時) (レス) id: da54526cc7 (このIDを非表示/違反報告)
流界(プロフ) - 初めまして!僕この作品大好きなので応援してます!!更新頑張ってください!(*´ω`*) (2018年4月17日 21時) (レス) id: ff8d2998f0 (このIDを非表示/違反報告)
サクサクしないクッキー - 14巻買ったんです!いやもうヤバすぎて爆転思想。 (2017年12月11日 14時) (レス) id: 49815f1b74 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:@ちょっとすごいしじみ@ x他1人 | 作者ホームページ:http://asdfghjkl
作成日時:2017年11月9日 19時