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喉の渇きを覚え、自販機で飲み物を買って部屋に戻ると、最近俺が一方的に避けている相手の顔がそこにいて。
傑の部屋の前で、Aが傑に紙袋を渡すところだった。
(…そっか、そりゃ気にもしねぇよな。だってお前は傑のことが)
腸が煮えくり返りそうだった。
Aが何か言おうとしていたが、何も聞きたくなくて言いたいことを全て吐き捨て、俺は夜の街へと繰り出した。
一晩経っても気分は全然晴れなくて。
気怠い体を引きずって、寮に戻った。
「な…んだ、これ…」
扉にでかでかとマジックで書かれた文字。
その筆跡はAのもので。
『これはお前の分だよ!バーカ!!』
そして、ドアノブのところに昨日Aが傑に渡そうとしていた紙袋が下がっていた。
瞬時に、自分が勘違いをしていたことに気が付いて、Aの部屋へと走った。
相変わらず扉に鍵はかかってなくて、飛び込んだ部屋の中は本当に人が使っていたのかと疑いたくなるほど物が無くなっていた。
(そういやこっちは最近使ってなかったか。じゃあ…)
Aの部屋を後にして、向かう先はAの使っていた地下室。
でもこっちも同様で、ソファが一つ取り残されているだけだった。
(…出て行ったのか?…俺が色々言ったせいで?)
最後に見たAの顔が思い出せない。
当然だ。
昨日俺はあいつの顔すらまともに見てなかったんだから。
「Aには会えたのかい?」
愕然としたまま部屋に戻ると、部屋の前で傑が待っていた。
「…いや。荷物ごと無くなってた。傑、あいつがどこに行ったか知ってんの?」
俺が尋ねると、傑は肩をすくめて扉から背を離し、ドアノブにかかったままの紙袋を俺に差し出した。
「地方へ行くからしばらく帰らないと言っていたけどね。まぁ焦らなくても少し待てば帰ってくるだろう」
「……クソッ」
Aが高専を出て行ったわけではないことに安心すると同時に、昨日Aの話を聞かなかった自分への怒りが湧いてくる。
「悟は分かりやすいな」
紙袋を受け取ると、傑はそう言って苦笑した。
「?…何が」
「Aのこと、好きなんだろ?」
(…いや。それは俺じゃなくて)
「お前の方だろ。Aもお前のこと好きみたいだし…良かったじゃん」
「まぁ確かに好きだけど、悟とは違う意味でだよ」
楽しそうに笑う傑。
俺には傑が何を言いたいのか、まだよく分からなかった。
「つか、このマジック油性じゃん。誰が消すんだよ…」
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Blue Berry(プロフ) - 雪マカロンさん» コメントありがとうございます!!面白いと言っていただけて感謝しかありません…!これからも精一杯頑張らせていただきますね! (2021年4月15日 19時) (レス) id: 734c250f2d (このIDを非表示/違反報告)
雪マカロン - 初コメ失礼します!とても面白い作品で、一気に読んでしまいました。更新頑張ってください! (2021年4月14日 19時) (レス) id: c9091179e7 (このIDを非表示/違反報告)
Blue Berry(プロフ) - 夜空さん» いつも読んで下さってるんですね!ありがとうございます!今後も毎日2話更新できるよう頑張りますね。 (2021年3月25日 9時) (レス) id: 734c250f2d (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - いつも楽しみく読ませてもらってます。更新楽しみにしてます頑張ってください (2021年3月25日 6時) (レス) id: 51f6c9b5da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Blue Berry | 作成日時:2021年3月24日 20時