見つけたモノ ページ43
「はー…終わった…」
吸い込んだ煙草の煙を、盛大に吐き出すチーノ。
昨日の暴動についての報告書を早急に提出するようトントンに言われ、先程必死に終わらせたばかりだった。
今や日課となった城壁での喫煙。
復興作業で賑わう城下町を見下ろしながら、チーノは大きく伸びをした。
「こちらにいらっしゃったのですね」
鈴の音のような声がして、チーノは振り返る。
そこには、いつもは無表情のAが、どこか真剣な面持ちで立っていた。
「あれ？おっさんと一緒に街の復興作業手伝いに行ったんやなかった？」
「はい。ですが、チーノさんにお伝えしたいことがあったので、戻ってきました」
「伝えたいこと？何？そんな改まって…」
不思議そうに首を傾げるチーノの横にAが並ぶ。
石造りの塀に手をかけ、街を眺めるA。
チーノも体の向きを変え、塀に寄り掛かった。
「…チーノさんは、ウィルの代わりにこの国を守ると仰って下さいましたよね。ウィルが大好きだった、この国を」
「うん」
即答するチーノ。
その返事を聞いて、Aは塀から手を放し、くるりとチーノに向き直った。
「その言葉を聞いてから、私も何かチーノさんにお返しできることがないか、ずっと考えてました」
「お返しって…確かにAとこの国を守るって約束はしたけど、そもそも俺この国の幹部やねんから、やって当然のことやん？Aが気にする必要なくない？」
きょとんとするチーノを見て、Aは左右に首を振る。
「…そうなのかもしれません。ですが、ずっと考えて、先日お返ししたいものを見つけたんです」
マントをはらい、右手を胸元へ。
それは、忠誠の証だった。
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作者名：Blue Berry | 作成日時：2020年12月10日 15時
