【wrwrd】伝説スナイパーの後継者２【ci】 (ページ42)

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書記長の憂悶ページ42

Aは城へ戻ると店長へ告げ、その足を会いたい人の元へと向ける。
その足は次第に速くなり、城門に着く頃には無意識の内に走り出していた。

「…あれ？Aちゃんやん。えらい慌ててどないしたんや？」

日の差す城内の通路を駆けていると、知った声に呼び止められ、Aは足を止めた。

「…っは、トントンさん」
「？息まで切らして珍しいやん」

トントンに指摘され、Aはそこで初めて自分の息が乱れていることに気が付いた。

と同時に暴動の最中、ゾムにも同じようなことを言われたと思い出し、動揺すると体力の消耗が激しくなるのだろうか…なんて、今関係のないことを頭の片隅で考えた。

トントンが赤いマフラーを揺らし、Aに近付き顔を覗き込む。

「何かあったんか？」
「いえ」

Aは顔を上げ、トントンの赤い瞳を見つめる。

『チーノのこと、見捨てんとってくれへんかな。…君だけは、最後までアイツの味方でおってあげてほしい』

その時、以前、目の前の彼が言っていたことを思い出した。

「……トントンさんは」
「ん？」

声を掛けると、トントンは優しく微笑んで首を傾げる。

「…もし、私がチーノさんをお守りできなかったら…トントンさんは、私を恨みますか？」

トントンは何故、少女がそのような問いを口にしたのか理解できなかった。

しかし、すぐに過去の自分の発言を思い出し、苦笑する。

「すまん…なんや、俺が口下手なせいで変に勘違いさせてしもうたんかな。あれは別に、チーノを守ってくれって言ったわけちゃうよ」

Aは黙って耳を傾ける。
翡翠の瞳が、続きを話してと先を促していた。

「チーノは…生い立ち上色々あって、心から信用してる奴っておらんのやと思う。まぁあいつは感情を隠すのが上手いから…あんまりそういうの、周りに悟らせんのやけど。…でも、君は違うと思う。二度もチーノを助けてくれた君のことは…あいつも信用しとると思うんや。やから君なら…あいつを救ってくれるんやないかって…」

そう話すトントンは、どこか苦しそうで。

Aはその時初めて、チーノのことをもっと知りたいと、そう思ったのだった。