【wrwrd】伝説スナイパーの後継者２【ci】 (ページ36)

今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:20,594 hit

弟子の危機ページ36

(…これは…誘導されているんでしょうか)

裏の通りに入っていく男を見失わないよう必死に追いかけるA。
男が角を曲がるたびにAは走るスピードを上げたが、不自然なくらいにギリギリ角を曲がる男の後ろ姿が目に入る。

そう、まるで、追いかけてくるAをどこかへ誘っているように。

(ですが、向かってる場所に違和感が…。こういった場合、身を潜める為に人気のない所へ行きそうなものですが…これは、町の中心部に向かっているような…？)

追っている内に冷静さを取り戻し始めたAが、色々と推測しながら角を曲がる。

しかし、曲がった先で待ち構えていた男を視界に捉え、瞬時に足を止めた。

「へぇ…流石に良い反射神経だな」
「…あなたは、『翡翠の一族』の方ですか」

楽しそうに目を細める男。
見た目はゾムと同じくらいの年か、それよりも若い印象を受ける。

自分より強いかもしれない男を警戒しつつ、Aは声を掛けた。

「いやぁ驚いたぜ。まさかこんな所にも同族がいたなんてな。…しかもお前、この辺じゃそこそこ有名らしいじゃねぇか。『伝説のスナイパー』の娘だっけ？」
「…この街をどうするつもりなんですか」

はぐらかすような語り口の男にAは問いかける。

すると男はびっくりしたようにきょとんとした後、口元を歪めて苦笑した。

「何勘違いしてんのか知らねぇけど、この騒ぎを起こしたのは俺じゃねぇぞ」
「…え？」
「そんなことより、ここで油売ってていいのかよお前。新人幹部の…チーノ、だっけ？この暴動起こした奴らの本拠地に乗り込んでたけど大丈夫なのかよ」

ニヤリと黒い笑みを浮かべる男。

Aはこの時、自分ではっきり分かるほどの恐怖を感じた。