少女の使命 ページ34
「…人手はいくらあっても問題はないはずです。拒まれる理由が、わかりません」
引き下がろうとしないA。
そんなAを見て、しんぺい神はフッと苦笑を漏らした。
「…頑固なところは、会った時から変わらへんなぁ。…でも、あかんよ。ここは言うなれば戦場や。こんな危険な場所に、君を留まらせるわけには…」
「大丈夫です。いざとなれば、私も戦えます。総統から兵の指導を任される程の戦闘能力はあると自負しています。ですから…」
「ダメ。…そういうことやないねん」
笑ったまま、受け入れてくれる様子のないしんぺい神。
言葉を失ったAに、しんぺい神は続ける。
「君が強いんは、俺もよう知っとる。けどな、問題はそこやないんよ。例えAちゃんが軍に出入りしとっても、君は一般人で、俺らは軍人。兵の指導を任されとっても、Aちゃん自身が軍人なわけやない。我々国の一国民や。そしてそれを守るのが、俺ら軍人の仕事やねん。…わかってくれる？」
軍人と、国民。
自分たちとは根本的に立場が違うのだと線引きされ、Aは無意識に唇を噛みしめ俯く。
なんだか胸が締め付けられるような、そんな気さえした。
「…それでも、私は…」
口を開くと同時に、Aが顔を上げる。
その時、目が合った。
しんぺい神とではない。
遠くからこちらを見ている…翡翠の瞳と。
その人物がゾムではないと理解する前に、Aはそっちに向かって駆け出していた。
「ちょっ…Aちゃん！？」
しんぺい神の声も振り切って、Aは走る。
(…それでも私は、ウィルの代わりにこの国の力にならなければ。ウィルが救ったであろう命を、私が代わりに守らなければ。…だってウィルは、私のせいで死んでしまったのですから)
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作者名：Blue Berry | 作成日時：2020年12月10日 15時
