【wrwrd】伝説スナイパーの後継者２【ci】 (ページ31)

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残された者ページ31

焼け崩れていく建物。人々の叫び声。硝煙の匂い。
そして、ナニカの燃える異臭。

Aは、人混みを避けるように屋根の上を駆けた。

「…町がっ…ウィルの大好きな町が…！早く、なんとかしないと…！」
「…お前、山に帰ったんやなかったん？」
「！」

声を掛けられAは足を止める。
いつの間にかゾムが隣に立っていた。

「ゾム、さ…」
「俺の気配に気付かんて…めっちゃ動揺してるやん。いつものお前なら気付けたやろ」

いつもより声のトーンが低い。

しかし、覗き込まれて見えた表情から、心配をされているのだということが分かった。

「お前一人か？チーノは…」
「A！！」

声がしてAとゾムが振り返る。
後方から、息を切らしたチーノが駆け寄ってきた。

「お前っ急に走り出したら危ないやろ！早く城に避難して…」
「ですが！町が燃えています！消火作業を手伝わなければ…」
「…チーノの言う通り、Aははよ避難した方がええ」

有無を言わせない程の圧力だった。
いつになく真剣な表情でゾムが話す。

「…この火事、ただのボヤ騒ぎとちゃうで。今調べとったけど、火の出所が不自然や」
「つまり、火をつけた犯人がいるんですね？」

瞬時に状況を把握したチーノが口を開く。
Aは犯人がいると聞いて、一つの存在が脳裏に浮かんだ。

「『翡翠の一族』…ですか」
「それは捕まえてみらな分からへんな。…とにかくチーノ、兵士らが消火作業にあたってる間に俺ら幹部は犯人探しや。多分そろそろインカムで指示来るで」
「はい！…じゃあA、あとは俺らに任せて早く城に避難するんやで」

「……」

ゾムとチーノはバタバタと走り去っていく。

置いて行かれてしまったAは、その後ろ姿をただ黙って見つめていた。