行きたい場所 ページ25
「これ、本当にいただいて良かったのですか」
白く、鎖骨の浮いた首元で翡翠色がキラキラと輝く。
Aは落ち着かなさそうにそれに触れながらチーノに尋ねた。
「当たり前やん！Aに付けてほしくて買ったヤツやねんから、もらってくれへんと俺が困るわ」
オスマンの時とは違い、Aがすんなり受け取ったのが余程嬉しかったのか。
今にもスキップしそうな軽やかな足取りで歩きながら返事をするチーノ。
「ありがとうございます。……あの、チーノさん」
「うん？」
「その、やっぱり寄りたいお店があるのですが、お時間よろしいですか」
「！…うん、もちろん！Aの行きたいとこ、どこでも付き合ったるわ！」
初めての、Aからのお誘い。
チーノは満面の笑みで、元気よく応えた。
「ここは…武器屋？」
「はい、武器屋です」
町はずれにある古びた建物。
予想していた店とは全然違う雰囲気のお店に唖然とし、チーノは指を差しながらAに尋ねた。
Aは返事をしながら扉を三回ノックして、そのまま中に入る。
「こんにちは」
「ん？おぉA嬢ちゃんいらっしゃ…おやおや！珍しいこともあるもんだ！」
Aが声を掛けると、カウンター奥から四、五十代くらいの髭を生やした男性が出てくる。
その男はAを見て笑みを浮かべ、チーノに気が付き面白そうに口元に弧を描いた。
「なんだなんだ、A嬢ちゃんのこれか？隅に置けないねぇ」
これ、と言いながら男が親指を立てる。
「…何を仰っているのかよく分かりませんが、彼は私の弟子で、師匠です」
そう紹介され、二人のやり取りにどう入るべきなのか悩んでいたチーノは、少しむずがゆいような、照れくさいような感じがした。
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作者名：Blue Berry | 作成日時：2020年12月10日 15時
