初めての贈り物 ページ24
「…仕事、まだ残ってると仰ってませんでしたか」
「まぁまぁええやんちょっとくらい！ここ最近ホンマに働き詰めやったから少しは息抜きさせてや」
Aを見送る為に、城門まで付いて来ていたチーノ。
そしてそこで別れるのかと思いきや、そのまま城下町まで付いてきた。
「トントンさんに怒られるのでは？」
「ちょっとくらい大丈夫やって！それよりA、こういうとこで買い物とかせぇへんの？ふもとの村に無いもんとかいっぱいあるやん」
チーノにそう言われ、Aは建ち並ぶ店をぐるりと見渡してみる。
それから首を左右に振った。
「今の生活で特別不足しているものはありませんし、どれも必要性を感じません」
「えー、服とか色々買ったらええやん。ドレスも似合っとったし、もうちょっとオシャレしても…あ！」
何かを見つけたのか、チーノはAの手を取って走り出す。
Aは特に抵抗もせず、そのまま付いて行った。
「ほらA！このお店とかどう？キレイなアクセサリーいっぱいあるで！」
「…必要性を感じな…」
「とりあえず見てみたらええやん！な？」
どうしてもAに何か買わせたいらしいチーノ。
必死に懇願され、Aは渋々頷いた。
チーノはパッと嬉しそうに笑い、また手を引いて店内へ。
そのお店は元々パワーストーンの専門店らしく、石の他に、石を使用したアクセサリーが陳列していた。
まじまじと真剣に商品を眺めるチーノの横で、その様子を伺いつつもAも一緒に商品を眺めた。
「………あっ」
嬉しそうな声がして、Aは声の主を見上げた。
チーノはAの手を放し、おもむろに一つの商品を手に取った。
石が一つ付いただけの、シンプルなネックレス。
その石は、日に透かして見ると、翡翠色にキラキラと輝いた。
「…これ、Aの瞳みたいやな」
そう言ってチーノは満面の笑みをAに向けた。
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作者名：Blue Berry | 作成日時：2020年12月10日 15時
